やさしいHAWAI’ I

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第28回:カメハメハ大王像は全部で何体?
2012年06月08日

【written by 扇原篤子(おぎはら・あつこ)】1973年から夫の仕事の都合でハワイに転勤。現地で暮らすうちにある一家と家族のような付き合いが始まる。帰国後もその 一家との交流は続いており、ハワイの文化、歴史、言葉の美しさ、踊り、空気感に至るまで、ハワイに対する考察を日々深めている。
【最近の私】先日、ハワイのシマダさんを通して知り合いになった友人のフラダンスを見に行った。基本的に"フラはハワイの人が踊るべき"と信じていた私は、心から楽しそうに踊る皆さんを見て、そんなこだわりはあっさりと捨ててしまった。楽しいひと時だった。
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ハワイでの歴史的人物として最初に挙がる名前と言えば、カメハメハ大王だ。ハワイ諸島を初めて統一した彼は銅像にもなっており、本物はもちろん、テレビや雑誌で見たことがある人も多いだろう。

28-image001.jpg最も有名なカメハメハ大王像は、オアフ島・ホノルルの最高裁判所の前に立っている。筋骨隆々とし、金色のヘルメットとマントを身につけて颯爽とポーズを取っているが、実はこれがオリジナルの像ではないのをご存知だろうか。

今からおよそ130年前、ハワイ王国7代目となるカラカウア王は、戴冠式に合わせてイタリアのフィレンツェでカメハメハ大王像を造らせた。ところが、完成した像を乗せた輸送船はハワイへ向かう途中で沈没。これにより、大王像は行方不明になってしまった。やむなく再び造らせたものが、現在ホノルルに建っているこの像である。

28-image003.jpgそしてその2年後、行方不明だったオリジナル像が発見される。州議会はカメハメハ生誕の地、ハワイ島のノースコハラに設置することを決定。現在は旧コハラ裁判所の前に立っている。私がハワイで親しくしていたリチャード・ヨコヤマさんはコハラ出身で、この像をとても誇りに思い、「オリジナルはホノルルのではなく、コハラの像だ」とよく話していたのを思い出す。

そんなこともあって、私は「ハワイ島のカメハメハ大王像」と言えば、このコハラのものだけだと思っていた。ところが15年ほど前、再びヒロを訪れた時のことだ。懐かしいヒロ湾の近くを車で通りかかった時、車窓から見たヤシの木々の間に、カメハメハ大王像の姿がちらりと目に入った。「えっ! こんなところにカメハメハ?」

28-image005.jpgヒロ湾に面した州立公園に立っていたその像は、ある企業がカウアイ島のリゾート地の入り口に立てようとしたものだそうだ。ところが、カウアイ島はハワイ諸島統一の際、カメハメハの武力制圧に屈しなかった島。この像についても、島民から抗議が噴出した。そこでこれもまた、ハワイ島に運ばれることになった。カメハメハがハワイ諸島統一を図ったのが1790年代。それから長い時を経た今もなお、カウアイ島民の誇りが息づいていることを表すエピソードで、何とも興味深い。


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そして、アメリカにはもう1体カメハメハ像が存在する。ワシントンDCにある、合衆国議会議事堂の中の「National Statuary Hall」にコレクションとして納められているのがそれだ。このホールには各州における歴史的人物の像が2体ずつ寄贈されている。合計100体ある像の中で、これは重さ6トン以上と最も重いため、床には特別な補強がされているそうだ。



有名な人物が銅像となるケースは多々ある。日本で考えても、西郷隆盛像は上野にあるだけでなく、生誕地の鹿児島には少なくとも3体はあるという。もしかすると、銅像の数は人気を表しているのかもしれないが、あまりあちこちにあるとありがたみがなくなるような気もする。 "カメハメハ大王像"はアメリカ国内に全部で4体存在するが、これ以上はもういらないと思っている。