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第10回:超オススメのアボリジニ映画「Samson and Delilah」
2010年11月26日


【written by メイソン千恵(めいそん・ちえ)】オーストラリア人の夫と共にブリスベンに在住。現在はオーストラリアの先住民、アボリジニを支援する団体「ノワカ」で活動中。驚きや感動を抱きながら、独特の文化と生活に触れている。
【最近の私】Coming soon...
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先日「Samson and Delilah(サムソンとデライラ)」というアボリジニ映画をDVDで観ました。実は、この映画を観るのは劇場を含め、これで3回目。私は普段あまり映画を繰り返して観るほうではないのですが、これだけは本当に何度観ても素晴らしいと思える作品です。

2009年に公開されたこの映画は、カンヌ国際映画祭カメラ・ドールや、米国アカデミー賞外国語映画賞など、数々の名誉ある賞を受賞しました。監督はWarwick Thornton(ワーウィック・ソーントン)。オーストラリアでも数少ない、アボリジニの映画監督です。彼にとって同作品は、初めての長編映画でした。舞台となったのは、監督の出身地でもあるオーストラリア大陸の中央部、Alice Springs(アリススプリングス)。この地域には多くのアボリジニ・コミュニティがあり、現在でもほとんどの人々が独自の言語を話します。そこで暮らす、十代の男女の生き様を描いた物語です。

ガソリンを吸ってハイな気分になるばかりの日々を送っているサムソンは、祖母の看病をして暮らすデライラに恋をする。ある日、デライラの祖母が亡くなり、それをきっかけに2人はアボリジニ・コミュニティを抜け出す。しかし、現実は厳しく、2人は、さまざまな障害にぶち当たる。住むところもなく、橋の下での生活を余儀なくされた2人は、生活のため、万引きをして飢えをしのぐ毎日を送る。デライラは小銭を稼ぐため絵を描き売ろうとするが、見向きもされず、サムソンは、現実逃避のため、さらにガソリンを吸い続ける。そんな中、デライラに更なる不幸が訪れる......。

この地域出身のワーウィック監督だからこそ描けた、アリススプリングスでのリアルな生活。アボリジニの人々が直面する厳しい現実が描かれており、胸が痛くなるような内容にもかかわらず、最後に感じるのは2人のたくましさと愛情です。

主演の2人、サムソン役のRowan McNamara (ローワン・マクマナラ)とデライラ役のMarissa Gibson(メリッサ・ギブソン)も、このアボリジニ・コミュニティ出身。なんと2人は、今回の映画のためだけに選ばれたまったくの素人で、本映画が彼らのデビュー作だったようです。この2人の間にはほとんどセリフがなく、それがこの映画の大きな魅力となっています。そのため、英語や、彼らの言語が理解できなかったとしても、十分楽しむことができると思います。もし興味があれば、観てみてください。絶対オススメです。

「Samson and Delilah」だけでなく、素晴らしいアボリジニ映画は他にもたくさんあります。ただ、過去に日本で公開されたものとしては、以前、第6回でも紹介した「Rabbit-Proof Fence(裸足の1500マイル)」を含め、ほんの数本しかないようです。

以下に、その他のアボリジニ映画を少し紹介します。将来、日本でも、もっとアボリジニ映画が紹介されるようになれば嬉しいです。

1:「Samson and Delilah」

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公式サイト(英語)
「Samson and Delilah」プレビュー





2:「Ten Canoes」 
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公式サイト(英語)
作品紹介(日本語)





3:「Beneath Clouds」 
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IMDb(英語)
作品紹介(日本語)





4:「First Australians」
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2010年4月より毎週日曜日に放送されていたテレビ番組をまとめたDVD。以下のサイトからも視聴可能。今まで明かされることのなかったアボリジニの悲惨な過去が、すべて語られています。
公式サイト(英語)