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第8回:食生活を見直して"Close the Gap"!
2010年09月30日

【written by メイソン千恵(めいそん・ちえ)】オーストラリア人の夫と共にブリスベンに在住。現在はオーストラリアの先住民、アボリジニを支援する団体「ノワカ」で活動中。驚きや感動を抱きながら、独特の文化と生活に触れている。
【最近の私】コアラをペットとして飼う夢を見ました。帰宅すると犬のように走ってきて、私の頭によじ登り、ハグしてくれるのです。夢の中で、私は必死にユーカリの木を探していました。ペットコアラ...いいかも。
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アボリジニの人々は他のオーストラリア人と比べて平均寿命が短いと言われています。2005年〜2007年の調査によると、アボリジニの平均寿命は、男性62.2歳、女性72.9歳。その他のオーストラリア人の平均寿命に比べ、男女とも約10歳短命です。ここ数年でかなり改善されてきているようですが、まだまだその差は大きく、現在でも深刻な問題となっています。
私がノワカで働き始めてからの3年足らずの間にも、多くのアボリジニの人々が亡くなりました。みんなごく身近なコミュニティの人々や、ノワカスタッフの親族や友人など。今年の夏にも4人の方が亡くなりましたが、毎回本当にショックを受けます。

アボリジニの人々のおもな死亡原因としては、がん、糖尿病、高血圧、心臓病、などの生活習慣病があげられます。そして、アボリジニ男性が心臓病にかかる割合は、その他オーストラリア人男性の3倍、アボリジニ女性が子宮がんで死亡する割合は、その他オーストラリア人女性の5倍と言われています。しかし、これらの病気の発端は、今に始まったことではなく、白人が初めてオーストラリアにやってきた、230年ほど前にさかのぼります。
白人がさまざまな食料(小麦粉、砂糖、紅茶、ジャム、缶詰など)を持ち込んだことにより、アボリジニの人々の食生活はがらりと変わりました。それまで伝統的な狩猟や採集などで生活をしていた彼らは、その見た事もない食べ物の美味しさに驚き、ジャムを1度に1瓶まるごと食べてしまったり、紅茶に山ほど砂糖を入れ飲んだりしていたそうです。しかし、そういった無茶な食べ方のせいばかりでなく、もともと砂糖や小麦粉、酒などに対する耐性が彼らの体にはなかったことから、アボリジニの人々は次々に病気にかかりました。また、白人がアボリジニの人々には免疫のない病気(インフルエンザ、はしか、結核など)を持ち込んだため、その結果、過半数以上のアボリジニの人々が死亡したのです。
現在、アボリジニの人口は、少しずつ増加していますが、それでもまだ全体の2.4%ほど。近年ではジャンクフードや添加物の多い食品などの影響も加わり、彼らの食生活や健康状態は好ましいとは言えない状況です。

しかし一方では、多くのアボリジニ団体が"Close the Gap"をスローガンに、アボリジニと、その他のオーストラリア人の平均寿命年齢の差を縮めようという活動を行っています。例えば、牛肉のように脂肪分の多い肉ではなく、本来アボリジニの食料であったカンガルーなど、高タンパク、低脂肪の肉を食べるように働きかけたりして、本来あるべきアボリジニの食生活を取り戻そうとしているのです。
今後、このような活動がもっともっと盛んになり、多くのアボリジニの人々が彼らにとってベストな健康状態を保てるようになれば、悲しいニュースを聞くことも少なくなることでしょう。その日が1日も早く来ることを一心に願っています。

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ノワカの活動の一部として参加した              ヘルシーランチタイム
"アボリジニ食生活勉強会" にて

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カンガルー&エミュー(オーストラリア
ネイティブの鳥)のBBQソーセージ

第7回:文化の壁を超えたステージ
2010年09月09日

【written by メイソン千恵(めいそん・ちえ)】オーストラリア人の夫と共にブリスベンに在住。現在はオーストラリアの先住民、アボリジニを支援する団体「ノワカ」で活動中。驚きや感動を抱きながら、独特の文化と生活に触れている。
【最近の私】先週末、友人の誕生日パーティに行ってきました。いつもは真面目な彼が、セクシーなドレスを着て、金髪ウイッグをかぶり、メイクもばっちりで踊りまくっていてびっくり!
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先日、ブリスベンのアナーラ(INALA)で、ヒップホップミュージック・フェスティバル"Stylin' up"が行われました。これは、年に1度開催される、アボリジニの人々によるアボリジニの人々のためのイベント。ステージがいくつも設けられ、テレビ局も取材に来る、とても大きな野外ミュージックフェスティバルです。もともとは10代の若者向けのイベントでしたが、会場内にはいつも、赤ちゃんから80歳ぐらいのエルダー(年長者)まで幅広い世代の人が大勢集まり、音楽を楽しんでいます。

以前ノワカで一緒に働いていた、友人のフレッド(Fred)と彼のヒップホップクルー、インポッシブル・オッズ(Impossible Odds)はこのイベントの常連。彼らはプロのアボリジニ・ヒップホップアーティストで、メッセージ性の強い曲もリリースしています。最近はレコード・レーベルを立ち上げ、地元ではかなりの有名人。みんな活躍を期待しています。もちろん私と夫も彼の大ファンで、とくに"Stylin up"では、いつも以上に気合いの入ったパフォーマンスを期待していました。
 
しかし、今年は楽しく見てるだけ、とはいかなかったのです。なんと、私たちがフレッドの前座を務めることになったのでした! 実は、夫と私はオーストラリアで和太鼓チームに所属しています。思いがけずチームに加わった私ですが、今ではすっかりどっぷりハマっており、最近では月2〜3回ペースでパフォーマンスをするほど。今回は、そんな私の活動を知るフレッドに前座を頼まれたのでした。彼の希望は和太鼓×ディジュリドゥ(ディッジ)の演奏。ディッジプレーヤーは、最近シドニーからノワカのコミュニティに引っ越してきたトロイ(Troy)です。彼もプロのパフォーマーで、ディッジやアボリジナルダンスなどで各地をツアーしています。

和太鼓×ディッジのステージは私の夢でした。しかも、大のヒップホップ好きとしては、まさに夢見心地。もちろん私たちは二つ返事でOKし、チームの中からメンバーを募りました。そして、ヒップホップのオープニングに丁度よさそうで、なおかつディッジに合う曲を選び、アレンジ。和太鼓のみでの練習に加え、トロイ、インポッシブル・オッズとも何度かリハーサルをしました。 
 
最終的に決定した形は、まず和太鼓のみの演奏が2分ほどあり、そこにトロイがディッジを吹きながら登場。しばらくディッジ×和太鼓の演奏が続いたあと、フレッドが『Yo,Yo,Yo, Whutz up brothers n sistas, this is da Japanese Drumming crew KIZUNA n my men Troy on da Didg yo....』みたいな感じでMCを始める。よきところでDJが『チェキチェキ...』と最初の曲をスタートし、そのままみんなで1曲演奏...というものです。全員が集まれる時間があまりなく、そろって練習できたのはたった2回。そんなわけで、不安を抱えたまま本番を迎えることとなりました。
 
当日、和太鼓メンバーは『ARTIST』と書かれたタグをさげ、ステージ裏へ。初めての経験にドキドキしっぱなしでしたが、パフォーマンスをするのはメインステージと知らされ、緊張はいっそう増すことに。マイクのセッティングもいまだかつてないほどのプロ仕様で、緊張に加えて焦りも募ります。でもここまでくると、逆に開き直るしかありません。出演時間は夕方5時30分頃。ちょうど陽が落ちかけるころでライティングもいい感じです。
 
結局、イベントは大成功!それぞれ反省点はありましたが、とにかく楽しめました。インポッシブル・オッズのメンバーもトロイもみんな大興奮。お客さんの反応も最高で、イベント後には多くの素晴らしいコメントをいただきました。中でも印象に残っているのは、『いくつもの文化が融合したステージだったね。これこそ、僕らが本来あるべき姿だよ。すごく刺激になった、ありがとう』という言葉。自分たちが楽しんだだけでなく、見ていた人たちに何かポジティブなものが伝えられたのだとしたら、これほど嬉しいことはありません。とても素敵な経験でした。Thank you everyone,機会があれば是非またやりたいです!

■イベントの動画

■インポッシブル・オッズのホームページ

Stylin'up-1.jpg           Stylin'up-2.jpg
フレッド(MC)、トロイ(ディッジプレーヤー)、             絆のオープニングパフォーマンス
絆(和太鼓チーム)