注目のファンタジー映画2本の予告編!『ラブリーボーン』&『コララインとボタンの魔女 3D』by Junichi Suzuki
2011年01月26日
今回は、注目のファンタジー映画2本の予告編!
『ラブリーボーン』&『コララインとボタンの魔女 3D』
鬼才が作り出すイマジネーションの世界を堪能しよう
2009年は面白い映画を多く観ることができた1年だった。今年もたくさんの素晴らしい映画に出会いたいと思う。さて、新作の予告編紹介に入る前に、私が2009年に観た映画本編の中から「ベスト7」を挙げたい。
★ 1.「グラン・トリノ」
●コメント:クリント・イーストウッド監督による、いつまでも余韻が深く残る作品。
★ 2.「チェンジリング」
●コメント:こちらもイーストウッド監督作品。アンジェリーナ・ジョリー演じる母親が、行方不明になった息子を探し続ける姿に心打たれた。
★ 3.「イングロリアス・バスターズ」
●コメント:いつものタランティーノの作品同様、おしゃべりと映画愛にあふれている。
★ 4.「母なる証明」
●コメント:ポン・ジュノ監督作品にハズレなし。母は強くて恐ろしい。
★ 5.「ウォーロード/男たちの誓い」
●コメント:団結と勝利の「レッドクリフ」より、巨大な権力に翻弄される男たちの運命を描いた本作の方が好き。 日本で公開されたのは香港公開版をカット&再編集したインターナショナル版だったが、DVDでは香港公開版に戻っている。香港公開版の方が良いです。
★ 6.「スペル」
●コメント:「スパイダーマン」シリーズでメジャー監督になったサム・ライミが久々にホラーに帰ってきた!怖くて笑える。
★ 7.「空気人形」
●コメント:ペ・ドゥナ演じる"人形"は美しくて悲しかった。板尾創路は不気味だったが、孤独な男の哀愁を漂わせていてよかった。
では、本題の予告編評論に移ろう。
2010年最初に紹介するのは『ラブリーボーン』。『ロード・オブ・ザ・リング』でアカデミー賞を受賞し、一躍メジャーな存在となったピーター・ジャクソン監督の新作だ。少女スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)と彼女のお婆ちゃん(スーザン・サランドン)の会話シーンから予告編は始まった。
スージー役のシアーシャ・ローナンは『つぐない』(2007年)でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、一躍注目を浴びた。今回のシアーシャ・ローナンは『つぐない』の時とは雰囲気が変わっていて、初見では誰だか分からなかった。それにしても、スーザン・サランドンもお婆ちゃんの役を演じるような年齢になったのか...と、しみじみ思ってしまう。
家族と楽しく暮らしていたスージーだが、ある日、野原で男と出会う。
男がこちらを振り向いた。
「1973年12月6日、私は14歳で殺された」。
警察が事件の捜査を始めるが、犯人は見つからない。少女に起こる悲劇をテーマにしたファンタジーだ。思い出すのは同じくピーター・ジャクソン監督による、女子高生の友情が衝撃的な出来事に発展する『乙女の祈り』(1994年)。ケイト・ウィンスレットの映画デビュー作だ。
「私がたどり着いたのは、とっても素敵なところ」。
死んだスージーは天国に召されるが、その天国は色彩豊かで美しく描かれている。ティム・バートンの『コープス・ブライド』(2005年)が頭をよぎった。暗い色調の現実世界と比べ、死後の世界はずいぶんカラフルだった。天国のシーンで特殊効果を手掛けたWETAは、ピーター・ジャクソンが母国ニュージーランドに設立した視覚効果(VFX)スタジオの名称である。
「でも、気持ちは落ち着かない。事件はまだ終わっていないから」。
徐々にサスペンス色が強まってきた。眼鏡をかけた男が何度も登場するが、顔はハッキリと映らない。この怪しい男を演じているのがスタンリー・トゥッチ。本作でゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネートされ、高い評価を得ている。これまではハリウッドリメイク版の『Shall we ダンス?』や『プラダを着た悪魔』など、コメディ作品に多く出演していたのでファンタジーとは意外である。彼がスージーを殺した犯人なのだろうか。
やがて犯人は、スージーの妹にも接触しようとする。スージーは天国から父親(マーク・ウォールバーグ)にそのことを伝えようとするが...。
ここで問題です。死んだ人間が愛する人のために現実の世界との交流を試みるハリウッド映画の代表作と言えば?(※正解は文末に)
次いでテロップに「ドリームワークス映画 フィルム4共同提供」と出るが、ドリームワークスはこの作品で製作総指揮を務めるスティーヴン・スピルバーグが設立した製作会社だ。これは知っている人も多いだろう。では、フィルム4をご存知だろうか。イギリスのテレビ局「チャンネル4」が持っている映画製作会社である。アカデミー賞作品『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)や『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』(2005年)などの話題作を手がけたことでも注目されている。映画ファンなら覚えておいて損はない。
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2本目は『コララインとボタンの魔女 3D』。こんなテロップで始まった。
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の監督の最新作。そう、あのヘンリー・セリック監督による待望の最新作である。
「『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の監督ってティム・バートンじゃないの?」
そう思っていた人も多いのでは? 違います。『ナイトメアー...』でのティム・バートンは製作、原案とキャラクター設定を担当しており、監督はストップモーション・アニメ(人形を1コマずつ動かして撮影する手法)作家であったヘンリー・セリックなのだ。
実は、『ナイトメアー...』の後に監督したアニメーション作品『ジャイアント・ピーチ』(1996年、製作/ティム・バートン)でも、日本公開時に"ティム・バートンの『ジャイアント・ピーチ』"と紹介された不運な監督である。次いで実写とアニメーションを合成したブラックユーモアあふれるコメディ『モンキーボーン』(2001年)を監督するが、その後に新作はなく、聞こえてきたのはウェス・アンダーソン監督の『ライフ・アクアティック』(2005年)で深海魚のアニメーションを担当した話ぐらいだった。
予告編は謎の人物が人形を縫うシーンから始まる。遊びの相手をしてくれない両親に不満気な少女、コララインは、秘密のトンネルから"別の世界"に向かう。奇妙で美しく楽しい世界。そこにはもう1人の"ママ"がいた。でも何かが違う。そう、ママの目は縫い付けられたボタンだったのだ。
ママだけではなく、この世界では全員がボタンを目として顔に縫い付けている。コララインに"ママ"はこう言う。
「ずっとここにいてもいいのよ。
ただひとつだけ条件があるわ。
目をボタンにしましょう」
楽しそうに見えた世界のダークな一面にコララインは気づく。そういえば、ダーク・ファンタジーの傑作と称される『パンズ・ラビリンス』(2006年)でも、空想の世界がもつ過酷さが描かれていた。
『コラライン』は子供向けの作品ではないにも関わらず、字幕ではなく吹き替えによる予告編であることに注目したい。3Dの本作は吹き替え版のみの公開と発表されている(2010年1月中旬現在)。榮倉菜々と戸田恵子、劇団ひとりなどによる吹き替えはキャラクターに合っていると思うが、個人的にはオリジナル版のダコタ・ファニングによる吹き替えも観てみたい。
3D上映では吹き替え版が主流だ。3Dだと字幕も立体で浮かせて出す必要があるため、画面の邪魔となり相性が悪い。でも、私はホラーやサスペンス映画で「逃げろ!」「危ない!」などの字幕が意表をつくかたちで飛び出してくるような演出も、悪くはないと思う。
『アバター』の3D版を観たとき、奥行きと立体感がある映像世界に驚いた。2010年はティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』やピクサーの『トイストーリー3』が3D上映される予定だ。そして『ソウ7』が3Dで製作されているというから楽しみだ。
近い将来、パソコンの画面上で気軽に3Dを味わえる予告編が登場するかもしれない。期待して待とう。
※答え:『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年)
⇒今回注目した予告編
『ラブリーボーン』と『コララインとボタンの魔女 3D』
★『ラブリーボーン』(Lovely Bone)
監督:ピーター・ジャクソン
脚本:フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、ピーター・ジャクソン
出演:シアーシャ・ローナン、スーザン・サランドン、マーク・ウォールバーグ
製作国:アメリカ/ニュージーランド/イギリス
2010年1月29日より公開
公式サイト:http://www.lovelyb.jp/#home
★『コララインとボタンの魔女 3D』(Coraline)
監督、脚本:ヘンリー・セリック
声の出演(日本語吹き替え版):榮倉奈々、戸田恵子、劇団ひとり
製作国:アメリカ
2010年2月19日より公開
公式サイト:http://coraline.gaga.ne.jp/