和製『ロボゲイシャ』VS 米製『ニンジャ・アサシン』 by Junichi Suzuki
2011年01月26日
2009年の秋はゲイシャとニンジャが熱い!?
和製『ロボゲイシャ』VS 米製『ニンジャ・アサシン』
最近気になった予告編は2本。どちらも"日本の文化"を映画化した作品である。
まずは『ロボゲイシャ』。「ロボコップ」と「芸者」を合体させたようなインパクトのあるタイトルだが、予告編のインパクトも負けず劣らず強烈である。海外の映画紹介サイト「Twitch」では動画再生回数歴代1位を記録しているらしい。
オープニングは芸者が登場して英語のナレーション「Geisha is...beautiful」が流れ、「ゲイシャはとても綺麗です」と日本語の字幕が出る。そして「Geisha is...Robot」(字幕「しかしゲイシャは...実はロボットです」)と進んでいく。
監督は、昨年公開されて話題になった『片腕マシンガール』の井口昇だ。アメリカの出資で作られた「片腕マシンガール」にはスシ、テンプラ、そしてヤクザと忍者も入り乱れて登場する。海外のマーケットに対して意図的に"外国人が考える日本のイメージ"を誇張したのだ。結果、日本文化とアクションの絶妙な融合が摩訶不思議な魅力を醸し出し、国内、海外の映画ファンに歓迎された。今回の『ロボゲイシャ』は純然たる日本映画だが、予告編での「ゲイシャ・パワー(こんな言葉あるのか?)」の炸裂は、前作を凌ぐ"世界向けエンターテイメント映画"の登場を予感させる。
さて2本目は、『マトリックス』シリーズで知られるウォシャウスキー兄弟がプロデュースし、11月に全米で公開される『ニンジャ・アサシン(Ninja Assassin)』だ。アメリカでは80年代に忍者映画が量産され、ブームとなった。近年になっても日本アニメの『マッハGoGoGo』を兄弟が実写化した『スピード・レーサー』や『G.I.ジョー』といったメジャー作品にニンジャが登場する(後者はなぜかイ・ビョンホン)。日本発の忍者アニメの人気もあいかわらずだ。
『マトリックス』についてウォシャウスキー兄弟は、日本アニメ『攻殻機動隊』に強く影響を受けたと語っている。前述の『スピード・レーサー』然り、日本カルチャーを愛してやまない兄弟が"忍者"を主役に選んだのは自然な成り行きだったのだろう。
さて予告編だが、ダークな映像の中で日本刀や手裏剣を使ったハードなアクション・シーンが繰り広げられるので、とりあえず本編への期待感は高まる。
『ニンジャ・アサシン』で主役を演じるのは『スピード・レーサー』にも出演していた韓国の俳優、Rain(ピ)だ。この出演がきっかけで、『燃えよドラゴン』のリメイク版ではブルース・リーが演じた主役の候補に挙がっているとのウワサもある。敵のボスに扮するのはショー・コスギ(ケイン・コスギの父)。ショー・コスギは日本人の俳優だが、19歳でアメリカに渡り、80年代の忍者映画『燃えよニンジャ』など数々の作品に出演し、ブームの立役者となった。そんな大御所に再び機会を与えたのも、兄弟による粋な計らいだ。暗殺者軍団VS抜け忍(組織を裏切った忍者)という展開は、今年公開の日本映画『カムイ外伝』と重なる。同テーマの米日作品を比べて観るのも楽しそうだ。
2本の予告編には共通点がある。作り手の「俺たちがやりたいことをやるぜ!」というエネルギーが充満し、あふれ出していることだ。「芸者がロボットになる」、「21世紀の現代で忍者が戦う」。いずれも荒唐無稽だが、面白そうではないか。「こんな描写はありえない。非現実的だ」などと先入観を抱くのは野暮というもの。映画は娯楽だ。観客を楽しませる作品に仕上がっていればいいのだ。
よし!『ロボゲイシャ』の本編をじっくり観て、『ニンジャ・アサシン』の公開を待とう。
⇒今回注目した予告編
『ロボゲイシャ』と『ニンジャ・アサシン(Ninja Assassin)』
★『ロボゲイシャ』
監督:井口昇
出演:木口亜矢、長谷部瞳、斉藤工、竹中直人、松尾スズキ、志垣太郎
製作国:日本 2009年10月3日より順次全国ロードショー
『ロボゲイシャ』サイト:http://robogeisha.com/
★『ニンジャ・アサシン(Ninja Assassin』
監督:ジェームズ・マクティーグ
製作:ウォシャウスキー兄弟、ジョエル・シルヴァー
出演:Rain(ピ)、ショー・コスギ、リック・ユーン、伊川東吾
製作国:アメリカ
全米公開:2009年11月25日
日本公開:未定
『ニンジャ・アサシン』アメリカ版サイト:http://ninja-assassin-movie.warnerbros.com/