【悪役を語るコラム】恐怖は暑い季節にやってくる!プレデターin 『プレデター』
2013年07月19日
【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。【最近の私】最近お気に入りの海外ドラマは『刑事ジョン・ルーサー』。ロンドンの曇り空の下、闇を抱えた刑事が事件を捜査するストーリーは見応えあり。唯一の不満はシーズン2が4話しかないこと。続きが気になります。
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梅雨が明けて夏本番になった。度を越えた暑さは、つらいというより、もはや怖いぐらいだ。そして映画の中でも、暑い季節にやって来て人間を恐ろしい目に遭わせる悪役キャラクターがいる。それは1986年に製作された『プレデター』に登場したエイリアン、プレデターだ。
ダッチ少佐(アーノルド・シュワルツェネッガー)率いる特殊部隊は、南米ジャングルで捕えられた政府要人を救うべく出動する。作戦は終了するが、謎の生物プレデターに襲われ、部隊のメンバーは1人ずつ犠牲となる。そして、最後に残ったダッチはプレデターと最終決戦に挑む...。
物語は『コマンドー』と『エイリアン』を合わせたような内容だ。当時『ターミネーター』『コナン』など、肉体派アクション俳優として人気を博していたシュワ。もはや彼の敵となるのは人間ではない!という案が出たかどうかは不明だが、今作ではエイリアンと対決することになった。
プレデターの特徴は、闇雲に人間を襲わないという点だ。彼らには自分より強いと認めた相手しか狩らないというルールがある。シュワの部隊を見つけても、しばらくは観察し、狩るに値すると判断してから行動に移す。そんな冷静さがある一方、残虐な一面も持っているのがプレデターの恐ろしいところ。映画の序盤で餌食になったグリーンベレーの隊員たちは、皮を剥がれ、木に逆さに吊るされていた...。
さらに恐ろしいことに、プレデターは特殊な装備も身につけている。それが"透明カモフラージュ"。全身の色をジャングルに同化させてしまうので、人間にはプレデターがどこに潜んでいるか分からない。いつ襲ってくるのかと見る者の恐怖感をあおる効果も持ち合わせた装備だ。
そんな彼らにも、唯一人を怖がらせることができない特徴があった。それが「素顔」だ。ヘルメットをかぶり、なかなか素顔を明かさないのだが、終盤、ついにその瞬間が訪れる。待ちに待った観客たちが見た顔は、なんとカブトガニのような風貌だった。これについての感想は賛否両論。公開時に映画館で観た自分は、「最後まで引っ張っておいてカニかよ」と思ったものだ。しかしその後、ビデオやテレビ放送で何度も観ていくうちに、最初の衝撃が薄れたせいか、「これはこれでアリかも」と考えるようになった。劇場公開から27年を経た現在でもプレデターのフィギュアが制作されているのだから、その人気はかなり根強い。
本作では、途中、南米に伝わる逸話が登場する。「昔も人が殺されたことがある。死体がトロフィーのように吊るされていた。あれは暑い夏だった。暑い季節になると起こる」。...プレデターの「謎めいた恐ろしい存在」という設定を魅力的に見せる効果は満点だ。
プレデターものの作品としては、ロサンゼルスに登場する続編『プレデター2』や、エイリアンと対決する番外編ともいえる『エイリアンVSプレデター』『AVP エイリアンズVSプレデター』が作られた。しかし、後付けでプレデターに色々な設定をしても興ざめなだけ。やはりシュワルツェネッガーと戦う、この第1作目には遠く及ばない。