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【悪役を語るコラム】あの頃、君は悪かった。
                    ゲイリー・オールドマンin『レオン』

2013年09月27日

【written by 鈴木純一(すずき・じゅんいち)】映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
【最近の私】『バス男』なる酷い邦題でDVD化された映画が、原題通りの『ナポレオン・ダイナマイト』で再リリースされることに。個人的に好きなコメディなので、オススメです。
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ゲイリー・オールドマンは『バットマン』シリーズでゴードン警部を演じ、『裏切りのサーカス』でアカデミー賞にノミネートされるなど、今や実力派俳優の1人であろう。しかしゲイリーは90年代には『トゥルー・ロマンス』のポン引き、『ステート・オブ・グレイス』のギャングなど、凶暴なキャラクターを演じていた。今回はその中から悪役に扮した『レオン』を紹介したい。

『レオン』でゲイリーが扮するのはニューヨークの麻薬捜査官ノーマン。しかもドラッグ犯罪に手を染めている。ノーマンは嘘をかぎ分けることができる男だ。ドラッグを間引きしたと疑われる仲買人の体を、犬のようにクンクンと嗅いで、「お前を信じてやる。ドラッグをくすねた奴を明日の正午までに探してこい」と言う。ドラッグを摂取する麻薬捜査官って、ミイラ取りがミイラになった感じですね。

次の日の正午、ノーマンは部下たちを引き連れて、仲買人の住むアパートまで押し掛ける。ノーマンはヘッドフォンでクラシック音楽を聴いている。「嵐の前の静けさは最高だ。俺がベートーベンを演奏してやるぜ」と宣言すると、仲買人の妻や娘と息子をショットガンで皆殺しにしてしまう。ノーマンの凶暴っぷりを披露する強烈なシーンだ。

そして仲買人を殺す前に「クラシックは好きか?ベートーベンは好きか?序曲を聴くと身震いする。でも序曲のあとはクソだ」と音楽の知識をひけらかす。犯罪者が内容と関係ない話をするのは、『レザボア・ドッグス』をはじめとする、クェンティン・タランティーノ監督の映画のようだ。そういえば、タランティーノが脚本を手がけた『トゥルー・ロマンス』でも、ゲイリーは物語とは関係ない話を繰り広げていましたね。

殺された仲買人の娘で、1人生き残ったマチルダ(ナタリー・ポートマン)は、殺し屋レオン(ジャン・レノ)に暗殺の指導を受け、家族の復讐を決意する。ノーマンが捜査官だと知ったマチルダは、警察署に向かう。しかし逆にノーマンに待ち伏せされる。ノーマンの「俺が恨みを買うようなことをしたか?」という問いに、マチルダが「弟を殺した」と答える。するとノーマンは「死の恐怖に直面した時に、命の尊さがわかる。お前は生きていたいか?生きていたいと思わない者を殺すのは、つまらないからな」と脅す。子どもでも容赦しないノーマンの異常さが出る場面だ。

そして終盤。ノーマンはレオンが隠れているホテルを見つけ、機動隊員たちを連れて襲撃する。しかしレオンによって隊員は全滅。ノーマンは「全員呼べ」と部下に命令する。「全員って、どういうことですか?」と聞く部下に「だから全員呼んで来いよ!」とブチ切れして絶叫するノーマン。そして総動員された警官と隊員たち。繰り広げられる激しい銃撃戦。この戦いの結果は、映画を観ていただきたい。『レオン』は、最近の作品では見られない、ゲイリーのキレた悪役ぶりを堪能できる1本である。