やさしいHAWAI’ I

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第34回:「ALOHA」に込められた意味
2013年01月11日

【written by 扇原篤子(おぎはら・あつこ)】1973年から夫の仕事の都合でハワイに転勤。現地で暮らすうちにある一家と家族のような付き合いが始まる。帰国後もその 一家との交流は続いており、ハワイの文化、歴史、言葉の美しさ、踊り、空気感に至るまで、ハワイに対する考察を日々深めている。
【最近の私】今年の冬は特に寒いように感じる。昨年暮れ、少し疲れもあったのだろう、風邪をこじらせ咳が長いこと続いた。こんな時この原稿を書いていると、今すぐにでもハワイへ飛んでいきたい気持ちに駆られる。
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ハワイの言葉と言えば、一番有名なのが「ALOHA」だ。挨拶として使われることでよく知られているが、ハワイ語の辞書として、もっとも権威のある「Hawaiian Dictionary by Mary Kawena Pukui and Samuel H.Elbert」によると、「ALOHA」には次のような意味が出ている。
「love, affection, compassion, mercy, sympathy, pity, kindness, sentiment, grace ・・・(愛、慈愛、思いやり、情け深さ、憐憫の情、同情心、親切、なさけ、厚情・・・)」 しかし、実は「ALOHA」にはもっと奥深い意味が含まれているのだ。

A ハワイ語の Akahai のA "優しさと思いやり"
L ハワイ語の Lokahi のL "調和と融合"
O ハワイ語の Oluolu のO "喜びをもって柔和に"
H ハワイ語の Haahaa のH "ひたすら謙虚で"
A ハワイ語の Ahonui のA "忍耐と我慢"
   (ハワイ州観光局のメルマガと上記のHawaiian Dictionaryを参照)

つまり、人への思いやり、心の温かさを、見返りを求めず無償で与え、相手に対してはひたすら謙虚に忍び耐えること・・・それが「ALOHA」の本質だ。
ハワイ大学のサマーセッションに参加するため、約2ヵ月間ヒロに滞在した時のこと。
1ヵ月ほど授業を受けた後、私はどうしてもヒロから北へ続く大好きなハマクアコーストの海を見たくなった。右手に続く美しい海を楽しみながら、幾重にも続く谷を巡り北へ車を走らせると、ホノカアという町に着く。

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〔映画『ホノカアボーイ』の舞台となった、ホノカアの映画館〕

日本では、2009年に公開された岡田将生主演の映画『ホノカアボーイ』の舞台として知られた町。ハワイ島北東部、先住民の王族が居住していた谷・ワイピオバレーの入り口にあり、のどかな昔のハワイの町を髣髴とさせる素敵な場所だ。

そのホノカアで、私はハワイの歴史、地理などに関する古書を探そうと、1軒のアンティークの店に入った。店の主人の名前はグレース。ハワイの歴史が大好きな彼女とは、大いに話が盛り上がった。私が100ドルほど古書を買い漁ると、「これで1日の売り上げは得たから今日はもう店を閉める」と言う。そして聖なる谷・ワイピオバレーを見せたいと、車で谷を見下ろせる場所へ私を連れて行ってくれた上に、家族の皆さんと一緒に夕食のバーベキューにまで誘ってくれたのだ。たまたま店に入ったどこの馬の骨とも分からない日本人の私を、グレースは心から歓迎してくれた。ハワイの素晴らしい夕陽を浴び、赤く染まる海を眺めながらのバーベキューは、私にとって一生忘れられない思い出となった。

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〔グレースのアンティークショップ〕

夜も更けヒロに戻ろうとして、溢れる感謝の気持ちを伝えた時、彼女は私にこう言った。
「This is the Hawaiian hospitality, spirit of Aloha(これがハワイのもてなしよ。アロハの心なの) 」 

グレースは、映画『ホノカアボーイ』にもチラリと登場した。バーベキューから何年も経って、日本でその姿をスクリーンで見つけた時、私は別れ際に彼女が言った"アロハの心"という言葉を思い出した。それと同時に、あのときの光景が目に浮かび、何とも言えない懐かしさで胸が熱くなったのだった。