明けの明星が輝く空に

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第11回:怪獣vs怪人
2010年12月03日

【written by 田近裕志(たぢか・ひろし)】子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】今週土曜日(日本時間)に、宇宙生物学上の発見についてNASAが発表するそうだ。宇宙人存在の証拠か?と思うとワクワクする。
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昔の子供達は、よく"怪獣ごっこ"をして遊んだものだ。怪獣の人形同士を戦わせたり、自分自身が怪獣になって砂山を壊したり。もちろんそこにはウルトラマンも出てくるけれど、その遊びはどうしたわけか"ウルトラマンごっこ"とは呼ばれなかった。

それと対照的なのは、やはり昭和の大ヒーローである仮面ライダー。僕らはライダーのマネをして高いところからジャンプし、怪人になればわざとやられるフリをしたが、その遊びの名前は"ライダーごっこ"であり、決して"怪人ごっこ"と呼ばれることはなかったのだ。

動植物や昆虫をモチーフにデザインされ、強力な武器を持つライダーシリーズの怪人たち。当時の子供たちには、十分にカッコよかった。けれど、"怪人ごっこ"という言葉がなかったことから見ても、人気では怪獣に一歩及ばなかったように思う。怪人が持ち得なかった怪獣の魅力、それは何だろうか。

知性よりも本能が勝るという点で、子供は多分に動物的だ。文字通り"ケモノ"である怪獣は、目の前にあるからというだけでビルや家を破壊する。何か目的意識があるわけじゃない。一方、"ヒト"である怪人は、世界征服という目的のために悪知恵を働かせ、破壊活動を行う。彼らはたびたび言葉で理屈を説明する。そんな怪人と、ただ雄叫びをあげ本能のまま突き進む怪獣。子供達にとってどちらが魅力的か。答えは言うまでもないだろう。

また、怪獣は怪人と違って巨大だ。銀座の交差点に立った初代ゴジラは、和光の時計より上に頭があった。子供に限らず、人はなぜか大きなものに惹かれるところがある。屋久島の縄文杉や水族館のジンベイザメといった動植物、クフ王のピラミッドなどの建造物にグランドキャニオンのような大自然の景観。大きさが人を魅了するものは多い。ビルよりも大きな怪獣は、それだけで魅力的なのだ。

さらに怪獣は暴れっぷりでも、怪人に大きな差をつけている。派手にビルを壊し、街を火の海にする。そういった場面に人は、スッキリした感覚を味わう。いわゆる"破壊のカタルシス"だ。それに対して、怪人の破壊行動はなんともせせこましい。水道に毒を流し込んだり、1人ずつ血を吸って吸血鬼を増やしたり。恐怖心はあおることができても、怪獣のような迫力や勢いは感じられない。子供たちが空き地で遊ぶには地味すぎるのだ。

今回は子どもたちの心理面にスポットを当て、怪獣の持つ魅力について考えてみた。次回はよりマニアック(!)に、怪獣のデザイン論に足を踏み入れてみよう。