第15回:おばちゃんとゆでダコ
2011年04月11日
【written by 田近裕志(たぢか・ひろし)】子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。【最近の私】災害などを描いた映画の封切が見送られているが、人はなぜ破壊シーンのある映画を見るのだろう。東北を襲った津波の映像を思い出し、そんなことを思った。
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怪獣の中には、何をモチーフとしたのか想像できないものがいる。翼が生えたかのように自由な怪獣デザイナーの想像力には、ただただ敬服するしかない。今回は、特にユニークな姿の怪獣を2体紹介しよう。
まずは、『ウルトラQ』に登場したガラモン。(正確に言うとロボットらしいが、まったく機械には見えない)ガラモンのモチーフとなったのは魚のコチやカサゴだと言われている。確かに横に広がった大きな口や、ギョロっとした大きな目玉、そして何の感情も感じさせない無表情な顔は魚っぽい。しかし全身の姿は魚からは程遠く、まるで手足を生やしたダルマのようだ。
体表は頭部も含め、突起物でびっしり覆われている。その突起物ひとつひとつの形状は、蔵王の樹氷かサンゴの枝。焼けてチリチリになった髪の毛みたいでもある。だから僕はガラモンを見ていると"パーマ頭のおばちゃん"を思い出してしまう。誤解を恐れずあえて言おう。オコゼっぽい顔のおばちゃんって多い...よね?近所のスーパーに行けば似ている人はきっと見つかる。ガラモンはそんな姿をした怪獣なのだ。
ガラモンが「ダルマ+手足」なら、『帰ってきたウルトラマン』に登場するタッコングは「ボール+手足」。名前から想像できる通りタコがモチーフだけれど、8本の足をウネウネさせているわけではない。全体的には、あのバレーボール中継のマスコット、バボちゃんのようなプロポーションだ。ただし、バボちゃんのようにボール自体が顔、というわけではない。正面真ん中からやや下の位置に、犬っぽい小さな顔が突き出している。
じゃあタコらしさはどこに?一目見て気づくのだが、タッコングの体は整然と列になって並んだ吸盤に覆われている。むむ、これはもしや。頭の中で包丁を取り出し、タッコングの顔や手足を切り落とす。そうして目を閉じた網膜の内に現れたのは、"ゆでダコ"だ!タッコングの正体は、足が丸まったゆでダコだったのだ...。
すごいと思うのは、ガラモンもタッコングもユーモラスでありながら、滑稽ではないことだ。怪獣としての威厳をしっかり保っている。ウルトラ怪獣、そしてそれを生み出した円谷プロ。侮るべからずである。
登場した番組が違うので、残念ながら"おばちゃん"と"ゆでダコ"の共演はなかった。でも、その2体が揃って平和な街を破壊したり、お互い取っ組み合ったりしていたら...。夕飯時に見る番組として、かなりおもいしろい絵柄が茶の間のブラウン管に現れたに違いない。