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第23回:「引退」という選択
2011年09月30日

【written by きただてかずこ】 子供の頃からお笑いが好きで、オトナになった今もバラエティ番組を見なければ夜も日も明けぬ毎日。ライブにもしばしば足を運び、笑える喜びにどっぷり浸りまくっている。
【最近の私】『あらびき団』がまさかの最終回を迎えました。ずっと続いて、ずっとニヤニヤさせてくれる番組だと思っていたのに...。でも、大トリがメグちゃんというのは『あらびき団』らしかったですね。
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先日、カリカというコンビが解散しました。林克治さんと家城啓之さんの2人がコンビを組んだのは1997年。テレビへの露出こそ多くはありませんでしたが、舞台を見に来る熱いファンがいて、今年も6月に単独ライブを2日間に渡って開催していました。しかし、林さんは芸人を引退し、家業を継ぐことを決意。14年も芸人を続けてきた末の出来事は、カリカのことをあまり知らない私にとっても驚きでした。

先週末、そんな林さんの「カリカ・林」として最後の仕事となった、放送作家の鈴木おさむさんがパーソナリティを務めるラジオ『考えるラジオ』(TBSラジオ)を聞きました。この日のテーマは「カリカ林さんの生き方について、『ここまでやったのにもったいない』と思いますか?それとも、『潔い』と思いますか?」。大ブレイクこそなかったけれど、業界内でも評価が高く、先輩の千原ジュニアさんも、カリカが世の中に知られる日はそう遠くないと思っていたそうです。でも、ご本人は芸能界での自分の才能に限界を感じ、誰に相談することもなく、芸人生活にピリオドを打ちました。「もったいない」ことなのか、「潔い」ことなのか、もちろん結論が出るような話ではありませんでしたが、私は誰がどんなに引きとめようとしたとしても、林さん自身が納得した上での決断なら、周りはそれを受け入れるしかないんだろうなという気がしました。

今回、この林さんの話を聞いて思い出したのが、3週間ほど前に見た舞台『NGワードライフ』です。作・演出を『考えるラジオ』のパーソナリティでもある鈴木さんが務め、今田耕司さん、宮川大輔さん、カラテカ・入江さんなどが出演したお芝居で、内容はコメディではなく、芸人さんのつらさや苦しさ、そして暖かさを描いたもの。この中に、トシ坊という芸人さんが出てきます。10年も芸人を続けながら、なかなか売れず、アルバイトをしながら活動しているのですが、その彼がこんなことを言います。

「才能がなかったら、芸人続けちゃダメなんですかね...」。

目標に向かって何かを続けるというのは、傍から見ればバカバカしく見えたり、未練がましく映ったりするのかもしれません。でも、頑張り続けることも1つの才能です。たとえ、自分が思い描いていた場所に辿りつけなかったとしても、その気持ちはどこかできっと役立つはず。納得の行くまでとにかく続けてみる、という選択は、私はアリだと思います。『M-1グランプリ』や『R-1ぐらんぷり』のような賞レースでようやく日の目を見た芸人さんの涙を見たり、笑いを混じえた苦労話を聞いたりすると、ネタで大笑いしながらも芸人さんへの敬意を抱いてしまうのは、いつかくる「その日」にかけてきた思いをどこかに感じるからなのかもしれません。

芸人さんが数多く活躍する今、カリカ以外にも解散するコンビがいますし、林さん以外にも芸能界を去る人がいます。でも、10年以上に渡って活動を続けてきたカリカ林さんの決断だからこそ、何か重いものを突きつけられたような感じがしてなりません。もちろん、ずっとカリカを、林さんを見続けてきた人の思いには全然かなわないのだけどね。