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第9回:アボリジニフードに挑戦!
2010年10月21日

【written by メイソン千恵(めいそん・ちえ)】オーストラリア人の夫と共にブリスベンに在住。現在はオーストラリアの先住民、アボリジニを支援する団体「ノワカ」で活動中。驚きや感動を抱きながら、独特の文化と生活に触れている。
【最近の私】今、オーストラリアはスクールホリデーの真っ最中。どこもかしこも子連れのファミリーでいっぱい。ショッピングセンターでは駐車場を見つけるのに15分、スーパーではカートが渋滞して前に進めない状態!恐るべしスクールホリデー...。
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「アボリジニって、イモムシ食べるってテレビで見たことあるけど、それって本当?」私が日本の友達にアボリジニの話をしたとき、最初に聞かれたことでした。私は「オーストラリアの中心部では、まだ食べている人たちもいるみたいだけど、ブリスベンでは、さすがにいないよ。」と答えました。実際、そのときは、芋虫を食べている人を見たことも聞いたこともなく、もうブリスベンからそういう習慣はなくなってしまったのだと思っていました。が、しかし、実はいたのです、身近なところに、芋虫(ウィッチティ・グラブス)を普通に食べる人が...!

第7回のコラム(「文化の壁を超えたステージ」)で紹介したディッジプレーヤーのトロイと、我々和太鼓チームは、またパフォーマンスをともにする機会がありました。そのパフォーマンス終了後、メンバーと片付けをしていると、トロイが大きな芋虫の5〜6匹入ったタッパーを片手に近づいて来るではありませんか! 私たちメンバーは、まさに「What the...(な、何あれ...)」という状態で、あっけにとられていると、「Hey Chie, want some?(ちえ、食べる?)」

このとき、私は初めて、前日の電話でトロイが「I got some witchetty grubs. Do you guys want to eat them? I'll bring them tomorrow anyway.(イモムシ採ったんだけど、みんなで食べる? とりあえず、明日もっていくね)」と話していたのを思い出しました。そのときは、ジョークだと思って、はいはい、芋虫でもなんでも食べますよ〜と聞き流していたのですが、まさか本当に持って来るとは思ってもいませんでした。しかも、まだしっかり生きている。

しかし、私もよく考えてみると、アボリジニ大好きなどと言いながら、まだ芋虫のひとつも食べたことがない。これはマズいのではないかと思い、「You guys gonna cook them aren't you? Then, maybe I can try some...(これ、焼くんだよね? それなら少し食べてみようかな)」と言うと、すかさずトロイの奥さんが、「No, you eat them alive.(ううん、生きたま食べるのよ)」と。「No way! I can't eat it alive!(ムリムリ! 生きたままは、絶対にありえない!)」蜂の子の佃煮を食べるのだって1時間かかったこの私が、10センチもあろうかという、巨大芋虫を生きたまま食べるなど、到底無理。しかし、そう叫ぶ私の横で、トロイは芋虫を一匹ひょいと掴み、まるごと口の中へ入れてしまいました。そして、ホラねと言わんばかりに、口を開けて見せてくれる...。周りで見物していた人たちはゲー!と大騒ぎ。そこで私は、「Can I just eat half of it?(半分だけでもいい?)」と聞いてみました。すると、今度はトロイの12歳の娘が、「No, you have to eat the whole thing because if you eat half, you can see the insides. That'll make you wanna throw up.(ダメだよ。半分だけ食べたら、中身が見えて吐きたくなっちゃうよ)」などと、ナマナマしいことを言うではありませんか。

ウゴめく芋虫たちを横目に、私はもう半分あきらめかけていました。しかし、今度は周りの見物人たちが「Come on Chie! You can do it! (ちえ、頑張れ!できるよ!)」と言って、ビデオを回し始めます。まったく、人ごとだと思って...。

でも、もうこうなったら、やるしかありません。一番小さそうなのを一匹選び、その手の中でウネウネと動く芋虫を一気に口に入れ、頭の部分で噛み切りました。もうそのあとは、とにかく噛んで、飲み込んで...。すると周りからは歓声(中にはウエーというような声も)が上がり、私は思わず、ガッツポーズ。

味は、生卵みたいだとか、ジャガイモのようだとか、いろいろと聞いていたのですが、私個人の感想としては、シーフードに近いと思いました。車エビを、ミディアムレアで食べたときのような...そんな感じでしょうか。臭みなどは、ほとんどなく、実は思ったほど、気持ちの悪いものではありませんでした。もう次回からは、それほど抵抗なく食べられそうな気がします。焼いてあれば、醤油でもかけてご飯と一緒に...!?

このパフォーマンス後の打ち上げパーティで、トロイ一家は日本食に初挑戦。最初は、生の魚だけは食べたくないと言っていたのですが、もちろん、生きた芋虫を食べた私が、それを聞き流すわけもなく、「I ate your food, you eat mine!(私はアボリジニフードを食べたんだから、今度は、みんながジャパニーズを食べる番でしょ)」と、しっかり刺身も食べていただきました。でも、さすが芋虫好きのファミリーだけあって、意外とすんなり食べていました。トロイも、トロイの奥さんも子供たちも、みんな初めて食べるものばかりだったようですが、ひとつひとつ食べ方を聞いては、きちんとそれを実践していました。

お互いの国の料理を食べ合い、私とトロイの友情もさらに深まりました。オーストラリアに来た際、機会があればぜひ、芋虫を食べてみることをお勧めします!本来のオーストラリアが見えてくるかもしれません。

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トロイとトロイの奥さんグエンダ、プロ和太鼓奏者の神奈川 馬匠先生と一緒に。

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打ち上げにて、初めての日本食を食べるトロイ一家。