第37回:ヒロの町 今昔物語
2013年04月12日
【written by 扇原篤子(おぎはら・あつこ)】1973年から夫の仕事の都合でハワイに転勤。現地で暮らすうちにある一家と家族のような付き合いが始まる。帰国後もその 一家との交流は続いており、ハワイの文化、歴史、言葉の美しさ、踊り、空気感に至るまで、ハワイに対する考察を日々深めている。【最近の私】夏が近づいてくると、日本でもあちらこちらでハワイに関するイベントが行われるが、何と言っても地元ハワイの「メリー・モナーク・フェスティバル」に勝るものはな い。今年も4月、世界中からフラダンサーがハワイ島のヒロに終結し、至高の戦いを繰り広げた。来年は必ず見に行く!!
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5年前にヒロを訪れた時のことだ。大好きなダウンタウンを散策しながら、マモ・ストリートとケアヴェ・ストリートの角にある'Ohana Café(オハナ・カフェ)に入り、サンドイッチを食べた。この店はヒロの観光案内で時々紹介されるのだが、ローカル色いっぱいの、どこか懐かしい雰囲気のあるコーヒーショップだ。
カウンターでコーヒーを飲みながらWatermark出版の『Exploring Historic Hilo』を開く。ここはかつて 「Elsie's Fountain(エルシーのファウンテン)」 という名の店だった。その歴史は古く、オープンしたのは1940年代。『Exploring Historic Hilo』では次のように説明されている。(以下モノクロ写真はすべて、『Exploring Historic Hilo』から)
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〔現在のOhana Cafe。 右は店内の様子〕
「エルシーのファウンテン:
エルシーのファウンテンは、1940年、ジェームズ・シノハラ氏がオープン。彼はいつも蝶ネクタイを締め、長袖のドレス・シャツを着、黒いズボンをはいていた。隣には日本式の銭湯と床屋があり、店の内部は、当時としてはおしゃれな高い腰掛にカウンターがあった。1997年に閉店した後、オーナーが変わり、今は'Ohana Café'として営業している。」 ( 『Historic Hilo』 より)
これを読んでいると、かつての町の様子や日系人の生活が目の前に広がり、「オハナ・カフェ」にいながらにして、「エルシーのファウンテン」の時代にタイムスリップしたような気持ちに陥ってしまった。
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〔1940年ごろのエルシーのファウンテン。店の前では、アロハウィークのパレードを見物している、当時の日系人の姿が見える。〕
実はこの町は、かなり昔からほとんど変わっていない。いろいろと調べていくと、1900年初頭のシュガーケーン・プランテーション時代の写真を見ても、さほど大きな変化がないのだ。
オハナ・カフェでひと休みした後、再びダウンタウンをぶらぶらと散策する。1915年に建設されたコロニアル風の威風堂々としたフェデラル・ビルディングは、かつて裁判所、郵便局、税務署など、行政司法の中心となった建物だ。現在、ここは郵便局の支局として使われているが、建物の姿は100年前とほぼ同じだ。
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〔右は1915年にフェデラル・ビルディングとして建てられた建物。 左は現在のポストオフィス。建物の正面に向かって左側から撮った写真〕
また、ハワイのガイドブックに必ず登場するパレスシアターは、1925年の建設当時のまま残る、ヒロを代表する歴史的な映画館。ちなみに、私が訪れた時は、日本でもヒットした『おくりびと』を上映していた。
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〔左が現在のパレスシアター。右は1933年当時の写真。建物の前に並んでいるのは"ミッキーマウスクラブ"の子供たち。10セントで映画が1本見られた時代〕
ダウンタウンにあるクレスビルは、1946年のツナミ被害を受けたが、建物自体は辛うじて残った。当時のアールデコ調のデザインはいまだに顕在だ。
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〔左が現在のクレスビル。右は1932年に建設されたクレスビル〕
ヒロの郊外にはレインボーフォールという滝がある。地元の人々に愛されるその滝は、今は周囲には緑が増えたが、その流れは今も昔も同じだ。
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〔右がおよそ100年前のレインボーフォール。左が現在の様子。〕
ヒロの町の姿は100年経ってもほとんど変わっていない。進歩進歩と日々目覚ましく変化する現代において、ヒロの町のこの"ゆっくりとした時の流れ"をどうとらえるかは、様々だろう。だが私が35年経った今も、依然としてヒロの町に惹かれる、その最大の魅力はここにある。そして人々の心の温かさも、時の流れやレインボーフォールの滝の流れと同じように、何年経っても変わらない。これもまたヒロという町の大きな魅力のひとつなのだ。
オハナ・カフェでひと休みした後、再びダウンタウンをぶらぶらと散策する。1915年に建設されたコロニアル風の威風堂々としたフェデラル・ビルディングは、かつて裁判所、郵便局、税務署など、行政司法の中心となった建物だ。現在、ここは郵便局の支局として使われているが、建物の姿は100年前とほぼ同じだ。
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〔右は1915年にフェデラル・ビルディングとして建てられた建物。 左は現在のポストオフィス。建物の正面に向かって左側から撮った写真〕
また、ハワイのガイドブックに必ず登場するパレスシアターは、1925年の建設当時のまま残る、ヒロを代表する歴史的な映画館。ちなみに、私が訪れた時は、日本でもヒットした『おくりびと』を上映していた。
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〔左が現在のパレスシアター。右は1933年当時の写真。建物の前に並んでいるのは"ミッキーマウスクラブ"の子供たち。10セントで映画が1本見られた時代〕
ダウンタウンにあるクレスビルは、1946年のツナミ被害を受けたが、建物自体は辛うじて残った。当時のアールデコ調のデザインはいまだに顕在だ。
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〔左が現在のクレスビル。右は1932年に建設されたクレスビル〕
ヒロの郊外にはレインボーフォールという滝がある。地元の人々に愛されるその滝は、今は周囲には緑が増えたが、その流れは今も昔も同じだ。
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〔右がおよそ100年前のレインボーフォール。左が現在の様子。〕
ヒロの町の姿は100年経ってもほとんど変わっていない。進歩進歩と日々目覚ましく変化する現代において、ヒロの町のこの"ゆっくりとした時の流れ"をどうとらえるかは、様々だろう。だが私が35年経った今も、依然としてヒロの町に惹かれる、その最大の魅力はここにある。そして人々の心の温かさも、時の流れやレインボーフォールの滝の流れと同じように、何年経っても変わらない。これもまたヒロという町の大きな魅力のひとつなのだ。