やさしいHAWAI’ I

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第45回:「ハワイ島から姿を消したサトウキビ」
2014年01月31日

【written by 扇原篤子(おぎはら・あつこ)】1973年から夫の仕事の都合でハワイに転勤。現地で暮らすうちにある一家と家族のような付き合いが始まる。帰国後もその 一家との交流は続いており、ハワイの文化、歴史、言葉の美しさ、踊り、空気感に至るまで、ハワイに対する考察を日々深めている。
【最近の私】1月13日から開幕したテニス全豪オープンにどっぷり浸かっている。 今大会は何と日本人選手が5人も参戦。もちろん一番の期待の星は錦織選手。ベスト8をかけてナダルと対戦したが、惜しくも敗戦。しかしチャンをコーチに迎えた錦織選手は一皮むけた。ガンバレ!
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前回のコラムで、以前、夫とハワイを訪れたときの話を書いた。そのとき初めて聞いた"Niuli'i"という地名は、ヒロにいる間中、私の頭を離れなかった。そして150年以上昔、日本からハワイへ移住した人たちが、常夏の日差しの下で、サトウキビを刈り入れる姿に思いを馳せた。大勢の日焼けした人々に混じり、ヨコヤマさんの仏壇に置いてあった、セピア色の写真の中にいる横山亀吉さんが鎌を振るっている・・・あたかも目の前にそんな姿が見えるほど、私には"Niuli'i"という名前が神秘的に聞こえた。

このヒロ訪問の旅の後半で、私はどうしても未知の場所Niuli'iを訪れてみたいと思った。ジョージ宅でバーベキューをご馳走になった翌日、私と夫はNiuli'iへと向かった。みんなの顔を見ると名残惜しくて涙が出そうになるからと前日のうちに別れを告げ、当日は誰にも会わず静かに出発した。

45-image001.jpgのサムネール画像ヒロのダウンタウンから国道19号線に入り、Niuli'iのある島の北部を目指す。途中、レトロな雰囲気を色濃く残す小さな町ホノムから山のほうへ入り、懐かしいアカカフォールを見た。周囲には、わずかにサトウキビが生えている。40年近い昔、私がこの島に暮らしていたころは、19号線の周囲はどこを見てもサトウキビだらけだった。風にそよぎ、サラサラと揺れるサトウキビを眺め"ああ、ハワイだな~"そう感じながら、ハワイの空気を胸いっぱいに吸い込んでドライブしたものだ。それが今、ハワイ島では全くと言っていいくらいサトウキビの姿を見ない。現在ではカウアイ島とマウイ島の2島でしか生産していないのだ。



〔アカカフォール〕

45-image003.jpg砂糖産業が減少した理由はいろいろある。かつてはプランテーションに集まったさまざまな国の移民の豊かな労働力があったが、今では人件費をはじめとする多くのコストが砂糖産業の経営を圧迫している。また刈り取ったあとのサトウキビの葉は以前なら燃やして、次の収穫の肥料にしていたが、何事につけ環境に配慮を求められる現況で焼畑は許されなくなった。


                               〔わずかに残るサトウキビ〕

しかし減りはしたものの、依然として砂糖はハワイの中心産業の1つ。最近では付加価値を高めたものが生産されるようになった。"Speciality Sugar"とよばれるマウイ産の砂糖は甘さに風味があり、私はわざわざ通販でハワイから取り寄せたりしている。

これとは別に、サトウキビの新しい可能性として最近注目されているのが、「バイオエネルギーの原料」という使い方だ。ハワイ州内でのエネルギー源として、現在は風力、水力、地熱、太陽熱などの整備運用が計画されている。サトウキビもこうした自然を利用したエネルギー・バイオエタノールの原料として、これから用途が広まっていくだろう。

45-image005.jpgこうして時代が移り変わるとともに、ハワイも姿を変えていく。そんな中、かつてと変わらない美しいハワイの海と空。私は、アカカフォールから再び国道19号に戻るときの、山の上から海を見下ろす景色が大好きだった。その景色はいつ見ても変わらない。

ここからさらに目指す島の北部には、Niuli'iのほかに、私がどうしても訪れたい場所が待っていた。
ハワイ大学のサマーセッションに参加したとき、ふと立ち寄ったホノカアの町で出会い、アロハスピリットを教えてくれたグレース(第34回参照)に、どうしても一目会いたかったのだ。