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「ワイアードカフェ ニュース」:ワイアードだけど結構アナログなカフェ
2011年02月25日

【written by 扇原 篤子(おぎはら・あつこ)】人が大好き。大勢人が集まる市場や食堂も大好き。人間臭い魅力に溢れる場所をこれからどんどん紹介していきたいと思っています。"人間ばんざい!"当ブログマガジン「Chewing Over」で「やさしいHAWAI'I」連載中。http://www.jvtacademy.com/blog/co/hawai/
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今、爆発的な拡大を見せ、世界が注視しているFacebook。ユーザーは世界ですでに5億人を超え、あと数年のうちに10億人に達するだろうと言われている。マーク・ザッカーバーグがいかにしてこのFacebookを立ち上げ、大成功を収めたかをドラマ化した映画「ソーシャル・ネットワーク」が今年のアカデミー賞にノミネートされるほどの注目度だ。この映画を観ていると、ネットの便利さとその威力を感じると同時に、恐ろしさをも痛感する。映画中の「インターネット無しでは現代の生活はなりたたない。今の人間はネットの存在の上で生きているのだ」というセリフを聞いてしまうと、私自身もインターネットの見えないワイアーにがんじがらめに縛り付けられてしまっているかのように思える。

                        
「ワイアー」という言葉から思い出したのが、日本橋室町の三井タワー2Fにある「ワイアードカフェ ニュース」。同じビル内にマンダリン・オリエンタルがあるせいか、ホテルのロビーのようにゆったりとした雰囲気で、高い天井にはシャンデリアも見える。中に入ると正面の白いレンガ張りの広いカウンターの上には、各種飲み物類が並んでいて、その上にはLED電光掲示板が最新のマーケット情報を流し、刻々と変化する東証平均株価や為替の動きを伝えている。窓際には5台ほどのPCが備え付けてあり、もちろん無線LAN環境は完備。オシャレな大人の雰囲気の店内は、お昼時のオフィスワーカーで埋まっていた。

「ここに来る人たちは、ランチの時にも為替の変動から離れられないのかしら。PCだけでなく、人間もワイアード(見えないインターネットのワイアーで縛られた)になっているのかなぁ・・・」と思いきや、ノートPCを抱えている人は一人だけ。備え付けのPCはすべてふさがっていたが、ほかは結構アナログの雰囲気で、ゆっくり食事を楽しんだ後、タバコを吸いながらのんびり時間を過ごす人あり、コーヒーを飲みながらゴルフ談義をする人あり・・・。でもランチタイムが終われば、それぞれのワイアード環境が待ち受ける仕事の戦場へ戻るのだろう。このカフェはワイアードではあるけれど、ある意味でワイアードから解放されるための場なのかもしれない。

私が注文したランチはタラモチーズラップサンド。タラモサラダとソーセージがトルティーアに包まれて、こんがりと焼き色がついたサンドイッチ。それにグリーンサラダとスープ、飲み物がついてくる。美味しかった! ランチ時間を少しはずせば、ゆっくりと一人でランチを楽しめる雰囲気はお勧め。

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★お店情報★
店名:ワイアードカフェ ニュース
ジャンル:オフィスワーカーのための新しいカフェ
電話番号:03-3231-5766
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 日本橋三井タワー2F
交通手段:営団半蔵門線 三越前 徒歩1分
営業時間:月-金 10:00-23:00  土/祝 11:00‐20:00 ランチタイム 11:00-16:00
定休日:日曜日

「ボンディ 神保町本店」: レトロな気分に浸りながら味わう欧風カレー
2011年02月17日

【written by 池田明子(いけだ・あきこ)】昭和の情緒ある音楽をこよなく愛し、子供のころから"一番のスター"はJULIE。今もライブに足を運び、その変わらぬ艶のある歌声に魅了され続けている。
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110209_150639.jpg古書店は過去への迷路だ。懐かしいタイトルや表紙を見つけ手に取り始めたら最後、何時間も出られなくなってしまう。古書にはそんな得体の知れない魅力がある。原田宗典の短編集『人の短編集』(角川文庫)に収録されている『人を喰う本』の主人公もそんな魔物に憑りつかれた1人だ。大学を卒業し、大型書店に勤める彼の元に、ある日奇妙な老人が現れ、1冊の本を探して欲しいという。分かっているのは『人を喰う本』というタイトルと聖書と同じくらい古いということだけ。見つけられない男を後目に、老人は意味ありげな笑いを残して立ち去るが、男はその本を探すことだけに夢中になり、やがて常軌を逸していく...

約180軒の古書店が軒を連ねるという神保町で、古書店や中古CDショップなどを巡った後に立ち寄りたいのが、欧風カレーの店ボンディ神保町本店。神田古書センタービル2Fに上がり、古書店の店舗内をそぞろ歩くとたどりつくという、絶妙な立地にある。

110209_143230.jpgカレーのメニューはビーフ、ポーク、チキン、チーズ、エビ、アサリ、野菜、キノコ、魚介、お子様用など豊富なラインナップ。さらに辛さも甘、中辛、辛から選べる。同僚と訪れた今回は、王道のひとつであるポークとチーズをそれぞれ中辛で注文してみた。カレーの前に運ばれてきたのは皮つきの丸ごとポテトにバター。これがシンプルだが自然な甘みがあって嬉しい一品なのだ。この素朴な味は、昔祖母が作ってくれた「蒸かしいも」を思い出させる。古書店ですでにレトロな気分に浸っていた私たちは子供のころの思い出話に花が咲く。やがて、運ばれたカレーはご飯の上にチーズが散らしてあり、ルーは銀のサーバーに入っている本格使用。ポークカレーには大きめのポークがゴロゴロ入っており、ボリューム満点だ。一方ルーにとろけるチーズがのったチーズ110209_143131.jpgカレーはさらにマイルドな味わい。ルーはとろみがあり、甘みや旨味が広がった後から、ほどよい辛さがやってくる。ヒリヒリするような強烈な辛さはなく、日本人好みのマイルドな味だった。カレーは1450円~なのでランチには少し贅沢な気もするが、ボンディはレトロな古書店と相まって、なぜか郷愁を誘い、また行きたくなる。今は亡き祖父母と暮らしていた時代が無性に懐かしくなった午後だった。

★お店情報★
店名:ボンディ神保町本店
ジャンル:カレーレストラン
電話番号:03-3234-2080
住所:千代田区神田神保町2-3 神田古書センタービル2F
交通手段:都営三田線・新宿線 営団半蔵門線 神保町駅 徒歩 1分
営業時間:11:00~22:30(L.O.22:00)
定休日:年中無休(年末・年始・夏季休業を除く)

「カフェ・エメ・ヴィベール」:幸せのひとくち
2011年02月10日

【written by 樋口孝一(ひぐち・こういち)】最後の晩餐に食べたいモノが、年を取るごとに変わっていきます。昔はグリーンカレー、最近はエノキ炒め。次は何になることやら。
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IMGP8522.JPG今回訪れたのは、昨年オープンした「コレド室町」の1階にある「カフェ・エメ・ヴィベール」。古き良きパリのカフェを再現したという店内は落ち着いた雰囲気で、ワインレッドのシートが印象的だ。早速、おすすめの「クロックムッシュ」を注文する。すりおろしたチーズが入ったモルネーソースとハムをはさんだパンの上には、チーズフォンデュでもお馴染みのグリュイエールチーズがこぼれ落ちそうに盛られている。こんがりと焼けていて、チーズ好きにはたまらない。食べてみると表面のカリッとした食感とふわふわのパン、トロっとしたソースが口の中に広がっていく。味と香りに幸せを感じながら、かつて訪れたある店と、ある映画を思い出した。

1899年にオープンし、創業100年を超えるパリの
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老舗カフェ「フーケッツ」。ワインレッドのひさしがシャンゼリゼでもひときわ目立つ。通りに面した席で、行き交う人々やプジョー車を眺めながら食べたこの店のクロックムッシュは格別だった。焼けたチーズがたっぷりとのってボリューム感も満点。パンのおいしさはもちろん、中にはさんであるハムの深い味わいに思わずペロリと平らげ、幸せな気持ちにさせられた。レマルクの小説『凱旋門』に登場し、各界の著名人も訪れるこの店では、毎年2月にフランス映画界で最も権威のある「セザール賞」の受賞パーティーが開催される。過去にこの作品賞に輝いた映画の一つに『戦場のピアニスト』がある。

この映画は、第二次世界大戦の直後にポーランドで刊行されたノンフィクションが元になっている。ナチス・ドイツのポーランド侵攻後、ユダヤ系ポーランド人のピアニストであるシュピルマンが、ワルシャワの廃墟の中を生き抜くさまを描いた作品だ。敵に追われながら隠れ家を次々と変えていくが、ついにドイツ人将校に見つかってしまう場面。戦争という極限状態において、音楽が命を救うというエピソードと、シュピルマンが奏でるショパンが心に残る名場面だが、私の印象に残ったのはこのあと。将校から差し入れてもらったパンに添えられたジャムを、屋根裏に隠れ続けるシュピルマンが目を閉じて、いとおしそうに味わうところだ。エメ・ヴィベールでクロックムッシュを堪能したときにふと思い出したのは、まさにこのシーンだった。彼と私の置かれた状況はまったく異なるが、食べる喜びが幸せや希望に繋がるのは、きっと同じだ。

そういえば、1810年にポーランドで生まれたショパンが最期を迎えたのは、パリであった。パリに想いを馳せながら、エメ・ヴィベールで幸せなひとときを過ごしてみては。ちなみにクロックムッシュは平日の11時から14時のみのメニューなので、ご注意を。

★お店情報★
店名:カフェ エメ・ヴィベール
ジャンル:カフェ&ブラッスリー
電話番号:03-6225-2552
住所:中央区日本橋室町2-2-1COREDO室町
交通手段:東京メトロ三越前駅・JR新日本橋駅 直結
営業時間:10:00~23:00(ランチL.O.14:00、カフェL.O.17:00、ディナーL.O.22:00)
定休日:不定休

「バシのせたが屋 日本橋店」:
          ラーメンと餃子のゴールデンコンビでちょっと一杯

2011年02月04日

【written by きただてかずこ】 子供の頃からお笑いが好きで、オトナになった今もバラエティ番組を見なければ夜も日も明けぬ毎日。ライブにもしばしば足を運び、笑える喜びにどっぷり浸りまくっている。当ブログマガジン「Chewing Over」で「ミクスチャー食堂2」連載中。
http://www.jvtacademy.com/blog/co/mixture/
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テレビで何かを食べるシーンが出てくると、見ているほうまでつい食べたくなってしまう。特にラーメンはヤバい。昨年、『アメトーーク!』(テレビ朝日)で、人気のラーメン店「餃子の王将」と「天下一品」が取り上げられた翌日は、どちらの店も行列になったのだとか。手軽に食べられるということもそういう結果につながっているのだろう。

昨年7月から放送され、今年1月にDVDが出た堺雅人主演のドラマ『JOKER ジョーカー許されざる捜査官』(フジテレビ)にもラーメンを食べるシーンが出てくる。主人公の刑事・伊達一義は、職場では「仏の伊達さん」と呼ばれるほど温厚だが、一方で法によって裁ききれなかった凶悪犯に対しては制裁を下すという2つの顔を持っていた。彼は凶悪犯と対峙する前、いつも馴染みの店でラーメンを食べる。実は、これには伊達が最初に裁きを下したときのことが関連していた...。途中、伊達以外の登場人物にも「別の顔」があることが明らかになるなど、驚きのストーリー展開から目が離せないドラマだったが、私にとっては見る前には必ずおなかを満たしておかないと危険極まりない作品でもあった。

201102041805000.jpgしかし、どれだけおなかを満たしていてもラーメンの誘惑は大きいもの。神田界隈は「ラーメン激戦区」と呼ばれるほどたくさんの店があるが、コレド室町にある「バシのせたが屋 日本橋店」も忘れるわけにはいかない。世田谷区・駒沢にある人気ラーメン店「せたが屋」の系列店で、麺は縮れ麺、出汁は化学調味料に頼らない天然の味でコクとうまみを引き出している。店の一番人気は「せたが屋らーめん」。チャーシュー3枚、半熟味付け玉子、四万十川あおさのりなどがトッピングされ、一見ボリューム満点だが、スープがあっさりしているため、女性にも食べやすい。また、「バシのせたが屋」はほかの「せたが屋」と違い、お酒のおつまみも充実。中でも「バシバシ餃子」は噛むと口の中に肉汁があふれ、思わずニヤけてしまいそうになる。伊達がこれを味わったら、幸せすぎて凶悪犯を裁くことなど忘れてしまうかもしれない。

店の中はレトロな雰囲気で、すべてテーブル席。隣の人201102041808000.jpgが食べるスピードを気にすることなく、落ち着いて食べられるので、女性1人でも入りやすい。「女子会」ばやりの昨今だが、時にはおひとりさまもいいもの。同じラーメン屋でも、コレド室町の中ならわびしさもない。誰の目も気にせず、がっつり食べ、ほんのり酔いたい人におすすめの店だ。

★お店情報★
店名: バシのせたが屋 日本橋店
ジャンル:ラーメン
電話番号:03-5200-0200
住所:東京都中央区日本橋室町2-2-1 コレド室町3F
交通手段:地下鉄銀座線三越前・JR新日本橋直結
営業時間:ランチ 11:00~15:30/ ディナー 17:00~23:00
定休日:コレド室町休館日に準じる