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「ビストロ石川亭 COREDO室町店」:
            一口ひとくち、意識して食事を楽しんでみよう

2011年05月27日

【written by 綾部歩(あやべ・あゆみ)】 趣味は料理。日々お店でおいしいものに出会っては自らのレシピに生かすべくアイディア収集活動中。最近引っ越し、自宅近くの新たなお店開拓を楽しんでいます。
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映画「南極料理人」は南極へ単身赴任で派遣された8名の南極調査隊の日常を、彼らの"食の風景"から描いた作品だ。南極での厳しい任務を支えている彼らの食生活を通じて改めて食事をすることが自分たちにとってどれほど大切なことなのかということを考えさせられる。

photo.JPG作品の中で特に印象に残っているのが、調査隊がフレンチ料理のフルコースを食べるシーン。南極では長い冬の折り返し地点となるミッドウィンター(冬至の日)は、正月やクリスマスよりも盛大にお祝いをする特別な日だという。劇中では、このミッドウィンターに隊員へフランス料理のフルコースが振舞われる。普段作業着などで食欲を満たすための食事をする隊員が全員スーツで料理の味をかみしめながら食事を楽しむ姿が逆に新鮮だ。ふと作品を観ながら自分自身を振り返り、そういえば最近食事を一口ひとくちしっかりと味わってない、そう気付かされたのだ。

photo3_ishikawatei.JPGそこで、食事をもっと意識して楽しんでみよう、という目的を携え訪れたのが、コース料理を手軽に味わえる「ビストロ石川亭」。神田駅近くに2店舗構えている同店だが、今回新たにCOREDO室町店オープンに3店舗目をオープンした。入口から店内にかけてビビッドな赤色に統一されており、お店に足を踏み入れる前からワクワクする店構えだ。



photo2_ishikawatei.JPG食事はプリフィクスコースとなっており前菜、主菜、デザート、飲み物を自分で好みのメニューを選ぶ形式である。選択肢が驚くほど多くメニューを選ぶ時間も楽しみの一つ。さらにこのディナーコース、3,300円と非常にリーズナブルなのも嬉しい。食事3品だけでは物足りない、と思うかもしれないが、これが驚きのボリュームだ。前菜が終わった時点で食べきれるか不安になったほどである。今回の主菜、牛ほほ肉の赤ワイン煮のトロトロとした柔らかさは言うまでもなく、ソースの味にも高級感が漂う。

お店の佇まいに心躍らせ、メニューを思い浮かべながら選ぶ時間を楽しみ、おいしい食事に舌鼓を打つ。食事を楽しむエッセンスがバランスよく細部にまでちりばめられており、全部まとめて楽しむにはもってこいの場所である。

★お店情報★
店名:ビストロ石川亭 COREDO室町店
ジャンル:フレンチレストラン
電話番号:03-3243-1881
住所:東京都中央区日本橋室町2-2-1 コレド室町3F
交通手段:銀座線・半蔵門線「三越前」駅(A6出口)より徒歩1分
営業時間:ランチ:11:00~16:00(ラストオーダー:15:00)
ディナー:17:00~23:00(ラストオーダー:22:00)
定休日:なし

「神田・むら治屋」:被災地の酒を飲みに行った
2011年05月20日

【written by おおひらしょうご】食う、飲む、遊ぶがモットーのダメ人間。将来の夢は主婦、もとい主夫。料理好き。
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「ハナサケ!ニッポン!」を知っているだろうか。これは、花見の自粛により酒の売り上げが激減した日本酒造りの蔵元たちが、"自粛をやめ、東北の酒を飲んで被災地を応援してほしい"とYouTube上で訴えているプロジェクトのことだ。メディアでも紹介されているし、サンドウィッチマンなど芸能人も協力している。僕もいち酒好きとして、微力ながらもこの運動に協力しようと思い、被災地の酒を飲みに行くことにした。


というわけでやってきたのは「神田・むら治屋」。この店では店主が吟味して取り揃えた日本全国の純米酒が味わえる。店のコンセプトは、"日本酒初心者から大ベテランまで楽しめる店"。震災直後からは被災地の酒を中心に扱う蔵元おもいの店でもある。

IMG_0141.jpg「被災地のお酒でおすすめなのをください」と頼むと、まず宮城の『墨廼江酒造・八反錦純米吟醸』を受け皿にこぼれるまで、なみなみと注いでくれた。一口飲んでみると、果物のような香りとすっきりとした味わいが口の中に広がる。次は茨城の『来福酒造・愛山純米吟醸袋しぼり生原酒』。濃い黄金色をしており、先ほどの酒とはうってかわってトロリと舌にからむ濃厚な味だ。栃木の『仙禽・雄町55 無濾過生原酒』は少し白く濁っていて、ピリピリする炭酸の刺激と、乳酸菌飲料のような風味の優しい味がした。

店主に酒の選択をまかせれば、いろんなタイプの酒が味わえ、まさに店のコンセプト通り日本酒初心者でも楽しむことができる店だった。日本酒に興味があるなら「神田・むら治屋」、おすすめである。しかし、多少は日本酒について勉強してから店に行った方がより楽しめるだろう。なにしろ日本酒は奧が深いが、それにぴったりのマンガがある。

IMG_0146.jpg「夏子の酒」は、蔵元の娘である夏子が、亡き兄の遺した1000粒あまりの幻の酒米、「龍錦」から、兄の夢であった日本一の酒を造ろうとする物語だ。まず、「龍錦」を栽培して米を増やさないといけないのだが、有機無農薬栽培にこだわる夏子は農家の人たちの賛同を得られず孤立してしまう。しかしそれを意に介さず一人で田んぼを耕す夏子、さて彼女は亡き兄の夢であった日本一の酒を造ることが出来るのか...。この作品を読めば、酒米の栽培にから酒造りが終わるまでの行程が理解できる。そして、純米酒と醸造酒の違いなど日本酒に関する知識も十分身につく。

さあ、日本酒のことを勉強して「神田・むら治屋」へおいしい日本酒を飲みに行くのはどうだろう。ちなみに昼間も営業していて、ランチでは自家打ちの太くてコシの強い蕎麦などが楽しめる。

★お店情報★
店名:神田・むら治屋
ジャンル:蕎麦屋・居酒屋
電話番号:03-3252-0810
住所:東京都千代田区内神田3-21-2
交通手段:(JR神田駅北口 徒歩1分/地下鉄銀座線神田駅北口 徒歩1分)
営業時間:昼 11:30~14:00/夜 17:00~22:30
定休日:日・祝・土曜日(昼)・第一、第三土曜日(夜)

「トレビ」:名作の一品と共に気軽なイタリアンを
2011年05月13日

【written by 落合佑介(おちあい・ゆうすけ)】食べることは生きること」がモットー。『神田グルメディア倶楽部』に入部して、食べ歩きを何時間でも続けられる自分を発見した。食への探求心は尽きず、どこかに面白そうな店はないか、と考え日々生きている。
-----------------------------------------------------------------------------------------「トレビ」取材写真1.JPG

料理に疎くては本物の男になれない。そう思ったのは、映画「ゴッドファーザー」を見たときだった。イタリア系アメリカ・マフィアの家族愛とファミリー間の抗争を描いた「ゴッドファーザー」には、食事の場面が多い。ファミリー同士の抗争だけでなく、食事や台所のシーンが登場するのは、敵には容赦なく報復を与え、仲間とは家族のように強い絆で結ばれているという、マフィアが持つ2つの顔を描くためなのだろう。中でも冒頭での一言が浮かぶほど印象深いシーンがある。腹心のロッコが、ゴッドファーザーの息子マイケルに「料理は男のたしなみだ」と言ってパスタの作り方を教える場面である。ゴッドファーザーとして将来大勢を養う運命のマイケルに、マフィアのしきたりをよく知る古株のロッコが、人を養う術の基本である料理を教える。その状況に、ただの坊やを本物の男に育てあげるファミリーの習わしを垣間見た気がして、料理は本物の男になる上で必須の技術なのだな、と実感した。


「トレビ」取材写真2.JPGこのシーンに登場するパスタは、ゴッドファーザー風スパゲッティと名付けられ、今では市民権を得ている。トマトソースにソーセージとミートボールを入れた一品で、隠し味に砂糖が少々入っているのが特徴だ。このパスタを食べたのが、今回行ったイタリア食堂「トレビ」。神田駅北口から歩いて2分のところにあり、気軽にイタリアンを楽しめる雰囲気の店だ。感じも良い店員さん2人とオーナーで切り盛りしていて、調理をオーナーが一人で担当していた。お客さんの話に気さくに受け答えしながらも一人で調理をこなす姿は、本物の男だった。空いた皿を取り替えるタイミングもさりげなくてサービスの目が行き届いている感じだ。価格はどうかと言うと、メインの料理が1000円台後半で、リゾットやパスタは1000円台前半である。ゴッドファーザー風のパスタはこの日のメニューにはなかったが、注文したら作ってくれた。また、前菜一皿が500円とリーズナブルなので、フォアグラをペーストしたカリカリのパンとさんまの燻製も注文した。フォアグラを使った前菜をこの値段で食べられる店はなかなかない。しっかり食べたいという人はもちろん、軽く食べたいという人にもオススメの店である。ただし、リーズナブルな値段もあってか満席なときが多いそうなので、予約の確認は忘れずに。


★お店情報★
店名:トレビ
ジャンル:イタリアン
電話番号:03-5289-8868
住所:東京都千代田区神田多町2-1笹島ビル1階
交通手段:JR神田駅北口より徒歩2分
営業時間:ディナーのみ 17:00~2:00
定休日:日曜・祝日