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「DevilCraft(デビルクラフト)」:神田で味わうシカゴの味
2012年06月14日

【written by 塩田明日香(しおた・あすか)】大の白米好き。子供の頃、「お母さんが作る料理で何が一番好き?」と聞かれ、「白いご飯!」と元気良く答えた親不孝者。でもそれくらい白米が大好き。白米さえあれば、どこでも生きていけます。
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1987年公開の映画【アンタッチャブル】は、1930年代初期のシカゴが舞台。マフィアのボス、アル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)と、財務省から派遣されたエリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)率いる「アンタッチャブル(買収されない連中)」の戦いを描く。
主演のケヴィン・コスナーの熱演もさることながら、印象深いのはアル・カポネ役のロバート・デ・ニーロだ。晩餐会で参加者に演説をする場面。野球におけるチームワークの大切さを話しながら、参加者を後ろからバットでめった打ちにする姿は、本当に恐ろしくて背筋がゾワゾワした。この時代のシカゴに生まれなくて良かったと、思わず映画と現実が混在してしまったほどだ。

しかしカポネのいないシカゴには、ぜひ行ってみたい!というわけで、今回は日本にいながらシカゴの味を楽しめるお店を紹介しよう。「DevilCraft(デビルクラフト)」は、3人のアメリカ出身のオーナーが経営している、シカゴ風ピザが楽しめるお店だ。シカゴ風ピザは別名「スタッフド・ピザ(詰め込まれたピザ)」呼ばれ、普段私たちが食べるピザよりずっと分厚いもの。そんな分厚い生地の間に、具とチーズがたっぷり入っているので、非常にボリュームがあるピザだ。お店ではピザだけでなく、様々な地域のビールを取り揃えており、店内はいつも大勢の外国人と日本人で賑わっている。

シカゴピザ.JPGまず注文したのは「ビッグ・チーズ」。エキストラチーズにモッツァレラ、パルメサン、プロボローネに、特製トマトソースを合わせたピザで、サクサクとした食感だ。生地が分厚いので、一切れだけでもかなり食べ応えがあるが、重たさはまったく感じられない。チーズとトマトソースだけのシンプルな味付けも食べやすく、1人で1枚全部平らげてしまった。

ビール.JPGこのピザと一緒に頼んだハワイのクラフトビール「マナウィート」は、パイナップルを使用しているため、飲むと口の中にフルーティーな甘さが広がる。非常に爽やかで飲みやすく、ビール独特の苦味が得意でない人にもおすすめだ。次に注文した「ヒューガルデンホワイト」は、ベルギー産の乳白色がかった淡い黄色が美しい。オレンジの皮とコリアンダーを使用したスパイシーな小麦のビールで、苦みやスパイシーさの中に、ほんのりとした甘みが加わっている、喉越しのすっきりした爽快感のあるビールなので、まさにこれからの暑い夏にピッタリのビールだ。

神田界隈では珍しく、外国人のお客さんが多いため、ピザやビールだけでなく、雰囲気でも外国を味わうことができるはず。土日や祝日もやっているが、人気店なので、来店前に予約を入れることをお勧めする。

★お店情報★
店名:DevilCraft(デビルクラフト)
ジャンル:居酒屋・バー
電話番号:03-6265-1779
住所:東京都中央区日本橋室町4-2-3 石川ビル1-5階
交通手段:JR神田駅南口から徒歩2分
営業時間:月~金(平日)17:00~23:30
土15:00~23:30 日・祝日 15:00~22:00

「Y's Land Bar IAN」:琥珀色の"生命の水"を味わわせてくれるバー
2012年04月20日

【written by 梶尾佳子】好きなものは映画とお酒と睡眠。ワインは1~2杯で眠くなるのに、なぜかウイスキーはストレートでもいける体質の持ち主。
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「世界は、女と男と酔っ払いで廻っている」こんなキャプションとともに、2002年に公開された日本映画「オー・ド・ヴィ」。オー・ド・ヴィとは蒸留酒のことで、フランス語で「生命の水」という意味だ。その名の通り、観た後に強いお酒を飲んだような気分にさせてくれる作品だ。

主人公の順三郎は函館のバー"フィニステール"のバーテンダー。毎晩常連客に酒を出しながら、彼も自身がこよなく愛するオー・ド・ヴィを飲むことで、日々の憂鬱を紛らわせていた。そんな中、浜辺で全裸の女性が幸せそうに微笑みながら死体で見つかるという事件が起きる。

この作品はとにかく登場人物が魅力的だ。順三郎を演じるのは岸谷吾郎。感情はあまり出さないが、逆に淡々とした表情でじっくり酒を飲んでいる姿は、観る方にもその味わいが伝わってくる。順三郎といつも一緒に酒を飲むのは、寺田農演じる酒店の店主。「死んだらその体を蒸留して酒にしてやろうか」と順三郎に言われるほどの酒好きで、店の裏でじゅんさいや、犬の尿がかかったタンポポなど、色々と変わった物を材料にして蒸留酒を造っている。他にも順三郎の共同生活者あやこは熟女としての妖艶な魅力を放ち、仏料理店の見習いで次第に順三郎と惹かれあうヒロミは、可憐ながらどこか危うくて目が離せない。個性の強い登場人物たちと不可思議なストーリーが、美しい函館の映像にうまく溶け込み、まるで作品自体が味わいのある一杯の蒸留酒のようだ。

DSC_0276.JPG三越前の駅から徒歩3分のところにある「Y's Land Bar IAN」は、蒸留酒の代表であるウイスキーを中心に扱うバーだ。シングルモルトの品揃えが豊富と聞いて行ってみると、地下2階にある黒い入口の扉の奥には、琥珀色のボトルがずらりと並ぶ棚があった。



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注文はメニューの中から好きなものを頼んでもよいが、知識が豊富なマスターに選んでもらうのもおすすめだ。今回はシングルモルトの聖地、イギリスのアイラ島のものにターゲットを絞って出してもらった。アイラモルトはピート(泥炭)をふんだんに使って香り付けしてあり、癖もあるがそのスモーキーな香りは慣れると病みつきになる。1杯目を飲んでいると、なんとマスターが実際のピートを目の前で燃やし、香りを嗅がせてくれた。目を閉じながらそれを嗅ぐと、遥か遠いアイラ島で作られたピートが、ウイスキーの一部になって今このバーに並ぶまでの長い過程が感じられるようだった。

DSC_0261.JPGのサムネール画像その後に出してもらったのはラフロイグ10年のカスクストレングス。ウイスキーは通常樽から出したあと水で薄めてボトルに詰められるが、カスクストレングスは薄めずにそのままボトル詰めした、いわば「原酒」だ。一口飲むと濃厚でスモーキーな味わいが口に広がる。きれいな琥珀色と先ほどのピートの香りのおかげで、何ともいえない一杯となった。



「Y's Land Bar IAN」でゆっくりウイスキーを楽しんでいると、ふと映画の中の順三郎の表情が頭に浮かんだ。映画のラストシーンで、彼がまるで体中に染み込ませるかのように味わって飲んでいた一杯は、きっとここで飲むウイスキーのような味だったのではないかと思った。歓送迎会やお花見などお酒を飲む機会が多い時期だが、久々にお酒を「味わって楽しむ」ことを思い出させてくれたお店だった。

★お店情報★
店名:Y's Land Bar IAN
ジャンル:バー
電話番号:03-3241-4580
住所:東京都中央区日本橋本町1-4-3 ヴィラアート日本橋B2F
交通手段:銀座線三越前駅 徒歩2分
半蔵門線三越前駅 徒歩3分
新日本橋駅 徒歩7分
営業時間:ランチタイム/月~金 11:30~14:00
カフェタイム/月~金 14:00~17:00
バータイム/月~土 17:00~00:00
定休日:日曜日

「六花界」: ひとり焼肉で改めて知る、「食事」という時間
2012年04月06日

【written by イシハラアヤ】焼き肉、もんじゃ焼等だいたいの店に一人で入れる「ひとりメシスト」。酒のツマミで一番好きなのは荒塩とスルメという根っからのしょっぱ党でもあります。
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映画『トニー滝谷』は、孤独な主人公・トニー滝谷の半生を描いた作品だ。トニーは生まれて間もなく母親が死亡。ジャズ演奏者の父親は仕事で全国を飛び回るばかりで家庭を顧みることはなかったが、自分自身を孤独だと思うことなく過ごしてきた。しかし、愛する人との結婚によって自らの孤独を認めるようになり、それと同時に、父親の音楽にも違和感を覚えるようになっていく。しかし、私には長らくこの「違和感」の正体が分からなかった。

rokkakai2.jpg「六花界」は神田駅東口近くの四畳半程の店だ。スタンディング形式で、中央のテーブルに置かれた二台の七輪を囲み、他のお客さんと一緒に焼肉をするのが特徴だ。
六花界にはいろいろメニューがあるが、初めて訪れる人には1,000円の盛り合わせがオススメ。肉はどれも新鮮でホルモン以外の肉は少々炙る程度で食べられる。また、つけだれは程良い酸味とコクのあるポン酢ダレで、肉が無くなった後も良い酒のアテになるそうだ。飲み物は一律400円、日本酒の種類が豊富で、レアな銘柄に出会えるかもしれない。

rokkakai1.jpg「それでは皆さん、カンパーイ!」という風に、店では全員で乾杯する。新しいお客さんが入るたびに何度も乾杯しているせいだろうか、ひとりで訪れた私だったが、いつの間にか初対面の隣の人や向かい側の人と雑談し、帰る頃には「また今度!」と言って店を出た。

その数日後、私は別の店でひとりで食事をした。読書や考えごとをして充実した時間だったが、この日は少しだけ寂しいと感じた。孤独を認めたトニーが父親の奏でる音楽に今までと違う側面を見いだして違和感を抱いたように、私も六花界で人と食事をする新しい楽しみを知り、それによってひとりの食事に対する思いが変わったのかもしれない。

音楽も食事も、新しい感覚を通すと今までに無い感じ方ができるようになる。ひとりの食事が苦手な人も、私のようにひとりで食べること好きな人も、六花界に行くと、「食」の時間に新たな側面を発見できることだろう。

★お店情報★
店名:六花界
ジャンル:居酒屋
電話番号:03-3252-8644
住所:東京都千代田区鍛冶町2-13-24
交通手段:JR神田駅から徒歩1分
営業時間:17:30~24:00
定休日:日曜、祝日

「VINOSITY(ヴィノシティ)」:ワイン好きが集まる、気取らないフレンチ
2012年02月03日

【written by 伊藤志穂(いとう・しほ)】お気に入りのリフレッシュ方法は、ジャズダンスでひと汗かくことと、お菓子作り。出来あがりはさておき、オーブンからただよう甘い香りを楽しむのが至福の時である。
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時代や国境を越えて愛される画家のなかには、日本でも高い人気を保ち続ける人物がいる。19世紀末のパリで活躍した、トゥールーズ=ロートレックもその1人である。毎年のように展覧会が催され、期を合わせてカフェの特別メニューやオペラ公演が企画されることもある。フレンチ・カンカンで有名な「ムーラン・ルージュ」のポスターは、彼の作品の中でも特になじみ深い。映画『葡萄酒色の人生 ロートレック』では、南仏の貴族出身であった彼が、身体的な逆境に負けず画家・版画家として活躍し、36才で世を去るまでが描かれている。さらに彼は、芸術の世界と同様に、料理やワインをこよなく愛した美食家でもあった。

VINO_picture1.jpg神田駅から歩いて数分のところに「ワイン好き」、という意味のラテン語を店名にしているお店がある。『VINOSITY(ヴィノシティ)』というそのワイン居酒屋は、スタッフが皆ワイン好きで、ソムリエやシェフは高級フレンチ店で経験を積んできたという本格派だ。そうはいっても堅苦しさはなく、店内は明るくカジュアルな雰囲気に包まれ、食事を楽しむ人々で賑わう。満足度の高い料理に対して、意外にも価格がリーズナブルなところが嬉しい。

VINO_picture2.JPGまず注文したいのは、その名もユニークな「こぼれスパークリングワイン」だ。グラスの縁ぎりぎりまで注がれるワインには、思わず「おおっ」と声をあげてしまう。一口含むと、甘い香りと微かな苦味が、口の中に広がっていく。また、食事のほうで言えば、まるで花瓶に生けられたような「バーニャカウダ」は、野菜の鮮やかな色や、大胆なカッティングを楽しみながら食べられる。メインに最適なのは「ぶ厚く切ったノルウェーサーモンの瞬間スモ-ク」。名前のとおり、肉厚で食べごたえがある。サワークリームと甘酸っぱいソースが添えられており、スモークサーモンそのものの塩味と合っている。

VINO_picture3.JPGなお、訪れる際には、ぜひ予約をお勧めする。そしてもし満席だったとしても、すぐにあきらめないでいただきたい。徒歩数分のところに、昨年の秋にオープンした系列店『VINOSITY magis』がある。開店から1年も経たずに2店舗目ができるところからも、人気の度合いが伺える。美味しい料理と楽しい時間を堪能できる、何度も通いたくなるお店だ。

★お店情報★
店名:VINOSITY(ヴィノシティ)
ジャンル:フレンチ、ワインバー
電話番号:03-6206-9922
住所:東京都千代田区鍛治町2-4-1 佐伯ビル1階、地下1階
交通手段:JR/東京メトロ銀座線 神田駅 徒歩3分、JR新日本橋駅 徒歩4分、東京メトロ 銀座線 三越前 徒歩5分
営業時間:月~金 ドリンク 15:00~翌4:00(L.O.03:30)、フード 17:00~翌3:00(L.O.)
土 ドリンク 15:00~23:00(L.O.22:30)、フード 17:00~22:00(L.O.) 定休日:日・祝日

「THE Jha BAR」:美味しいビールを楽しめる場所
2011年10月21日

【written by 塩田明日香(しおた・あすか)】大の白米好き。子供の頃、「お母さんが作る料理で何が一番好き?」と聞かれ、「白いご飯!」と元気良く答えた親不孝者。でもそれくらい白米が大好き。白米さえあれば、どこでも生きていけます。
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「ONCE ダブリンの街角で」は、私が好きな数少ないラブストーリー映画の一つだ。主演はアイルランドの人気バンド"ザ・フレイムス"のフロントマン、グレン・ハンサードと、チェコのシンガーソングライター、マルケタ・イルグロヴァ。男はオンボロのギターを奏でるダブリンのストリートミュージシャン、女は花売りで生計を立てるチェコからの移民で、街の楽器屋でピアノを弾かせてもらうことを楽しみにしている。そんな二人が出会い、音楽を通して次第に惹かれあっていく...。

この作品が素晴らしいのは、ラブストーリーでありながら必要以上に愛を語らないところだ。口数の少ない二人の代わりに、彼らを繋ぐ音楽が揺れる心を代弁してくれる。観終わった後に、切なさと温かさが、心にゆっくりと染みわたる映画だった。

THE Jha BAR1.JPGこの映画を見ると、いつもアイルランド気分を味わいたくなる。そこで今回訪れたのが、神田駅から徒歩5分ほどの場所にある「THE Jha BAR(ザ・ジャハ・バー)」。イギリス&アイリッシュビールをはじめ、ドイツ、ベルギー、アメリカなど、世界各国のビールが楽しめるアイリッシュパブだ。


THE Jha BAR3.JPG

最初に注文したのはマーフィーズ・アイリッシュ・スタウト。その名の通りアイルランド産で、白くてクリーミーな泡と黒いビールが特徴だ。口当たりがよく、喉越しが非常に爽やかで、最後に仄かに苦みが残る飲みやすいビールである。一緒に注文したトマトとモッツァレラチーズのサラダや、フィッシュ&チップスとの相性も抜群。特にフィッシュ&チップスは、ボリュームもたっぷりなのでぜひ食べてもらいたい。 次に飲んだのは、南ドイツの古都、バンベルクの伝統的な燻製ビール、シュレンケルラ・ラオホビア。店員さん曰く「好き嫌いが分かれるが、ハマったら癖になる」ビールらしい。一口飲むと口の中に煙の香りが漂い、苦みと共に仄かな酸味が広がった。今までに飲んだことのない味だが、この不思議な感覚は癖になるかもしれないと納得してしまった。

THE Jha BAR2.JPGまた、ビールが得意でない人にはアイルランド産のキルケニーをお勧めしたい。泡が非常にクリーミーで優しい飲み心地なので、ビール独特の苦みが苦手な人も楽しく飲めるだろう。他にもウィスキー、ウォッカ、カクテル等も豊富に取り揃えているので、ビール大好きな人も、そうでない人も、ぜひ恋人や友人と一緒に訪ねてみてほしい。

★お店情報★
店名:THE Jha BAR
ジャンル:居酒屋・バー
電話番号:03-3252-3258
住所:東京都千代田区神田多町2-5東銀神田ビルB1
交通手段:神田駅 徒歩5分
営業日・営業時間 月~木:18:00~02:00 金:18:00~4:00 土:18:00~23:30
定休日:日・祝日

「串カツ甲子園」:なにわの味
2011年07月08日

【written by おおひらしょうご】食う、飲む、遊ぶがモットーのダメ人間。将来の夢は主婦、もとい主夫。料理好き。
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ウルフルズの1995年の曲、「大阪ストラット」のPVは今見ても非常に面白い(PVはYouTubeで無料公開中)。ロケ地はもちろん大阪で、阪神タイガースの帽子を被った青年と、革ジャンにど派手なワイシャツを着たヤンキーっぽい男性、そして町のおっちゃんやおばちゃん(すべてボーカルのトータス松本が演じている)といういかにも大阪人たちの掛け合いが最高なのだ。僕は関西出身で大阪の高校に通っていたので言わしてもらうが、早口でまくし立てるようなしゃべりのテンポや会話の中身はまさに「ザ・大阪ワールド」。例えば、喫茶店の場所を教えるのに「この道ブワーッと行ってグワーッと曲がってでっかいビル、ボワーン立ってるからその角シュッと曲がんねん」という擬音だらけで説明をするシーンがあるが、実際に大阪の人は道案内をするときにブワーッみたいな擬音をよく使う。

IMG_0174.jpgもし大阪に行く機会があれば道を聞いてみよう。擬音を交えながら丁寧に教えてくれるはずだ。大阪に行く機会はないけど大阪の雰囲気を味わってみたい、というのなら、「串カツ甲子園」に行ってみたらどうだろう。"本場 新世界の味"と書かれた看板の横には大阪の観光名所である通天閣と、そこに安置してある幸福の神様"ビリケンさん"の写真パネルが飾ってある。入り口から大阪っぽくどぎついデザインだ。大阪で普通、「串カツ」と注文すれば細長い牛肉の串カツが出てくるのだが、この店ではその牛の串カツが1本90円と安さも大阪並。ステンレス製の深い容器にタップリ入ったソースに串カツをジャバッと漬けて食べるのが本場大阪の食べ方だ。ソースはみんなで使うから、もちろん"二度漬け禁止"。細かいパン粉の衣に、シャバシャバしてとろみが少ないソース、そしてキャベツは食べ放題と、大阪の串かつ屋をかなり忠実に再現していて、ちょっとした旅行気分を味わえるんじゃないだろうか。ちなみに店の場所だが、神田駅の東口を出てブワーッと行った所にあるから簡単に分かるはずだ。

★お店情報★
店名:串カツ甲子園 神田店
ジャンル:串カツ屋
電話番号:050-5815-3316
住所:東京都千代田区鍛冶町2-12-13一番街共同ビル1・2F
交通手段:JR神田東口徒歩1分
営業時間:【月~金】17:00~23:30(LO.23:00)【土・祝】17:00~22:00(LO.21:30)【日 曜】16:00~21:00(LO.20:30)
定休日:無休

「マンダリンバー」:自分自身と雰囲気に酔いしれるバー
2011年06月24日

【written by きただてかずこ】 子供の頃からお笑いが好きで、オトナになった今もバラエティ番組を見なければ夜も日も明けぬ毎日。ライブにもしばしば足を運び、笑える喜びにどっぷり浸りまくっている。当ブログマガジン「Chewing Over」で「ミクスチャー食堂2」連載中。
http://www.jvtacademy.com/blog/co/mixture/
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2011051621590000.jpg昨年7月から放送されたドラマ『うぬぼれ刑事』(TBS)。脚本は宮藤官九郎、TOKIOの長瀬智也が主演したコメディタッチの刑事ドラマで、今年5月には宮藤官九郎が向田邦子賞を受賞した作品だ。長瀬演じる「うぬぼれ」は捜査に支障をきたすほど惚れっぽいうえに、容疑者の女性が「自分のことが好きなんじゃないか」とうぬぼれてしまう刑事。そんな彼を取り巻く人々も個性的で、細かいところまで見逃せないドラマだった。

2011051621580000.jpgこの作品には、毎回バーでのシーンが登場する。「I am I」というこのバーは、うぬぼれと彼の4人の仲間、通称「うぬぼれ5」のたまり場。ルックスばかりでおバカな若手俳優や、7ヶ国語で「愛してる」と言えることが自慢のイケメンパティシエ、恋をすると相手に影響されてしまうグラビアカメラマン、生徒にモテていると思い込んでいる大学教授。「I am I」はそんな彼らがうぬぼれと共に、毎夜、不毛な恋愛談義や妄想トークで盛り上がる、言わば癒しの場所である。「バー」という言葉から想像するようなムーディな雰囲気はなく、むしろ毒舌なママがいるせいで時に緊張感さえ抱かせる店だが、それでもうぬぼれ5のメンバーには居心地のいい場所だったのだろう。

2011051621590001.jpg神田近辺にもアットホームさが売りのバーがいくつもあるが、時にはしっとり落ち着いた雰囲気の中で飲んでみたいもの。そんなときにおススメなのが、マンダリン オリエンタル 東京の「マンダリンバー」だ。37階にあるこのバーにはカウンターとテーブル席、そしてスタンディングバーがある。窓からは眼下に広がる美しい夜景を楽しむことができ、月曜日から土曜日まではジャズトリオの生演奏もある。また、スタッフは全員女性で、バー初心者でも安心してお酒を楽しむことができる。メニューはビールやワインなどもあるが、カクテルの種類も豊富。私はアイリッシュコーヒーを頼んでみた。メニューには冷たい物しか出ていなかったが、暖かいものも用意してくれるとのことだったので、ホットで注文。一緒に出されたピクルスやアーモンドと一緒に飲む一杯は、店の雰囲気と相まって、とても味わい深かった。これからの時期なら、ラムベースのモヒートもお勧め。ミントの葉がたっぷり入り、さっぱりとした味は、外の蒸し暑さを忘れさせてくれるだろう。

バー、しかもマンダリンともなると、敷居が高いように思いがちだが、あの落ち着いた雰囲気は一度行くとクセになる。最初は誰かと、次はひとりで行って、うぬぼれ刑事さながらに、「オリエンタルバーでグラスを傾ける自分」に酔いしれてみてはいかがだろう。

★お店情報★
店名:マンダリンバー
ジャンル:バー
電話番号:0120-806-823
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1
交通手段:地下鉄三越前駅すぐ、神田駅より徒歩7分
営業時間:11:30~24:00
定休日:なし

「ご当地酒場 北海道八雲町」:"ジン"としみる北の大地
2011年06月02日

【written by 樋口孝一(ひぐち・こういち)】最後の晩餐に食べたいモノが、年を取るごとに変わっていきます。昔はグリーンカレー、最近はエノキ炒め。次は何になることやら。
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入口.jpg八雲町。北海道は渡島(おしま)半島の北部に位置し、日本で唯一、日本海と太平洋に面した町だ。道内でも有数の酪農地帯で、広大な牧場に牛が悠々と草を食む姿が見られる。じゃがいもなどの畑作、ホタテ貝などの養殖も盛んだ。かつてこの町を訪れた際に、大地や海の恵みを堪能させてもらった。そんな八雲の味を楽しめる店が、今回訪れた「ご当地酒場 北海道八雲町」である。

コロッケ.jpgまずは「八雲産じゃがいもコロッケ」を注文。コロッケにはじゃがいもをしっかりつぶしたクリーミーなタイプと、ごろごろと半つぶしにしたタイプがある。私は断然クリーミー派だが、この店のコロッケは私の好みにピッタリのクリーミータイプだ。さらに、しゃきしゃきとしたコーンの小気味よい食感がアクセントとなっており、ほっこりとした気持ちになる。続いて「直送!刺身定食」。船上活〆のホッケ刺は、身のしまった白身魚のように見えるが、口に入れるとトロッと溶け、
やがて耳の奥に"ジン"としみるような、しみじみとしたうまみを感じる。「八雲産しょうゆ」が、刺身のうまみをさらに引き出している。「八雲の恵み」を存分に味わった。

刺盛.jpg北海道を舞台にした映画に、高倉健主演の『鉄道員(ぽっぽや)』がある。雪深い駅を中心に、定年を目前に控えた駅長・佐藤乙松(おとまつ)が人生を振り返る物語だ。ある日、駅舎に人形の忘れ物があった。翌日、持ち主の姉という高校生が現れ、乙松のためにと、いつの間にか鍋を作ってくれる。不思議に思いながらも鍋をつつくうちに、これまでの人生を思い出した乙松は胸を詰まらせる。「(俺は)幸せもんだ。好き勝手なことばっかしてきて、あげくに子供もかみさんも死なして。だのに皆して良くしてくれるっしょ。ホントに幸せもんだ」。かつては栄えていた炭鉱の町に知らされる地元路線の廃止など、厳しい現実がある中でも、周りの人々の心が北海道のぼくとつとした言葉にのせられて温かく伝わってくる。「八雲の恵み」のように、心の奥にじんわりとしみる映画だ。

ちなみに「八雲産じゃがいもコロッケ」は北海道の広大な大地を思わせる大きさ。2人で1皿(2個)がちょうどよさそう。

★お店情報★
店名:ご当地酒場 北海道八雲町
ジャンル:和食
電話番号:03-3242-1833
住所:日本橋室町1-5-2 東洋ビルB1
交通手段:(三越前駅より徒歩1分)
営業時間:昼/11:30~14:00(月~日/L.O.13:30)
夜/17:00~23:30(月~金/L.O.23:00)、17:00~23:00(土、日/L.O.22:30)
定休日:年末年始

「神田・むら治屋」:被災地の酒を飲みに行った
2011年05月20日

【written by おおひらしょうご】食う、飲む、遊ぶがモットーのダメ人間。将来の夢は主婦、もとい主夫。料理好き。
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「ハナサケ!ニッポン!」を知っているだろうか。これは、花見の自粛により酒の売り上げが激減した日本酒造りの蔵元たちが、"自粛をやめ、東北の酒を飲んで被災地を応援してほしい"とYouTube上で訴えているプロジェクトのことだ。メディアでも紹介されているし、サンドウィッチマンなど芸能人も協力している。僕もいち酒好きとして、微力ながらもこの運動に協力しようと思い、被災地の酒を飲みに行くことにした。


というわけでやってきたのは「神田・むら治屋」。この店では店主が吟味して取り揃えた日本全国の純米酒が味わえる。店のコンセプトは、"日本酒初心者から大ベテランまで楽しめる店"。震災直後からは被災地の酒を中心に扱う蔵元おもいの店でもある。

IMG_0141.jpg「被災地のお酒でおすすめなのをください」と頼むと、まず宮城の『墨廼江酒造・八反錦純米吟醸』を受け皿にこぼれるまで、なみなみと注いでくれた。一口飲んでみると、果物のような香りとすっきりとした味わいが口の中に広がる。次は茨城の『来福酒造・愛山純米吟醸袋しぼり生原酒』。濃い黄金色をしており、先ほどの酒とはうってかわってトロリと舌にからむ濃厚な味だ。栃木の『仙禽・雄町55 無濾過生原酒』は少し白く濁っていて、ピリピリする炭酸の刺激と、乳酸菌飲料のような風味の優しい味がした。

店主に酒の選択をまかせれば、いろんなタイプの酒が味わえ、まさに店のコンセプト通り日本酒初心者でも楽しむことができる店だった。日本酒に興味があるなら「神田・むら治屋」、おすすめである。しかし、多少は日本酒について勉強してから店に行った方がより楽しめるだろう。なにしろ日本酒は奧が深いが、それにぴったりのマンガがある。

IMG_0146.jpg「夏子の酒」は、蔵元の娘である夏子が、亡き兄の遺した1000粒あまりの幻の酒米、「龍錦」から、兄の夢であった日本一の酒を造ろうとする物語だ。まず、「龍錦」を栽培して米を増やさないといけないのだが、有機無農薬栽培にこだわる夏子は農家の人たちの賛同を得られず孤立してしまう。しかしそれを意に介さず一人で田んぼを耕す夏子、さて彼女は亡き兄の夢であった日本一の酒を造ることが出来るのか...。この作品を読めば、酒米の栽培にから酒造りが終わるまでの行程が理解できる。そして、純米酒と醸造酒の違いなど日本酒に関する知識も十分身につく。

さあ、日本酒のことを勉強して「神田・むら治屋」へおいしい日本酒を飲みに行くのはどうだろう。ちなみに昼間も営業していて、ランチでは自家打ちの太くてコシの強い蕎麦などが楽しめる。

★お店情報★
店名:神田・むら治屋
ジャンル:蕎麦屋・居酒屋
電話番号:03-3252-0810
住所:東京都千代田区内神田3-21-2
交通手段:(JR神田駅北口 徒歩1分/地下鉄銀座線神田駅北口 徒歩1分)
営業時間:昼 11:30~14:00/夜 17:00~22:30
定休日:日・祝・土曜日(昼)・第一、第三土曜日(夜)

「主水 日本橋店」:心に残る島根の味
2011年03月04日

【written by 樋口孝一(ひぐち・こういち)】最後の晩餐に食べたいモノが、年を取るごとに変わっていきます。昔はグリーンカレー、最近はエノキ炒め。次は何になることやら。
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主水4.jpg古事記にその創建が記され、近年はパワースポットとしても人気の「出雲大社」、夕景が多くの人を魅了する「宍道湖」、日本最古の歴史を持つ名湯「玉造温泉」、鉱山遺跡としてはアジアで初の世界遺産に登録された「石見銀山遺跡」...。知れば知るほど奥深い島根県。その島根の味を堪能しようと訪れたのが「主水(もんど)日本橋店」だ。

お昼の名物は「がいな丼」。「焼きサバがいな丼」や
がいな丼.jpg
「穴子白焼きがいな丼」など迷った結果、さまざまな味が楽しめる「海鮮がいな丼」に決定。「がいな」とは島根の言葉で「大きい」という意味。その名の通り大ぶりな丼が登場。お店オススメの食べ方に従い、まずは「がいな丼のタレ」にわさびを溶いて丼にかける。甘じょっぱいタレが色とりどりの海鮮に風味を与える。具材は、イクラ・サーモン・ヒラメ・マグロ・アジ・サバ、そして島根ではダルマダイとよばれるメダイ。続いて丼の中身を椀に盛り、だし汁をかける。だし汁のカニの風味が、8種類の海鮮と相まって口いっぱいに広がり、海鮮のふるさとである日本海が思い浮かんだ。そのイメージと重なるように、島根を舞台にした映画『RAILWAYS』のシーンがよみがえってきた。

一流企業のエリートサラリーマン筒井肇は、50歳を目前に取締役への打診を受ける。一方で、親友の川平が工場長を務める工場を閉鎖する役を任される。そんな折、故郷の島根で1人暮らしをしていた母が入院。追い打ちをかけるように、筒井のために工場閉鎖の業務に奔走する川平が交通事故で亡くなる。母を見舞うために帰省した島根で、少年時代の夢を思い出した肇は、人生を大きく変える決断をする...。

島根の青い海と抜けるような空。家の畑の前をゴトゴトと走り抜ける一畑(いちばた)電車、愛称バタデン。現代の物語でありながら、郷愁をそそるシーンが満載だ。物語の後半、祖母が余命わずかであることを知った肇の娘・倖(さち)が、畑で泣き崩れる。肇は娘に「ばあちゃんのだ」と畑のキュウリを半分に折って差し出す。祖母のことが大好きな倖にとって、生涯忘れられない味になるのだろう。

赤天.jpg忘れられない味といえば、「赤天(あかてん)」がある。島根の知人に郷土料理を尋ねたとき、ぜひにと薦められた。唐辛子を混ぜた魚のすり身を揚げたもので、食感はもっちり、やがてピリッとした辛さが口に広がる。もちろん、今回ご紹介した「主水」でもメニューに赤天が用意されている。島根のソウルフードはマヨネーズをつけるのが定番のようだが、「主水」で食べるなら「甘露しょうゆ」もオススメだ。

★お店情報★
店名:主水 日本橋店
ジャンル:島根の味・日本海の幸
電話番号:03-3231-2213
住所:中央区日本橋室町1-5-3
交通手段:三越前駅より徒歩1分
定休日:年末年始
営業時間:【昼】平日11:00~15:00(L.O.14:30)、土日祝11:00~16:00(L.O.15:30)
【夜】17:00~23:00(L.O.22:30)