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「六花界」: ひとり焼肉で改めて知る、「食事」という時間
2012年04月06日

【written by イシハラアヤ】焼き肉、もんじゃ焼等だいたいの店に一人で入れる「ひとりメシスト」。酒のツマミで一番好きなのは荒塩とスルメという根っからのしょっぱ党でもあります。
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映画『トニー滝谷』は、孤独な主人公・トニー滝谷の半生を描いた作品だ。トニーは生まれて間もなく母親が死亡。ジャズ演奏者の父親は仕事で全国を飛び回るばかりで家庭を顧みることはなかったが、自分自身を孤独だと思うことなく過ごしてきた。しかし、愛する人との結婚によって自らの孤独を認めるようになり、それと同時に、父親の音楽にも違和感を覚えるようになっていく。しかし、私には長らくこの「違和感」の正体が分からなかった。

rokkakai2.jpg「六花界」は神田駅東口近くの四畳半程の店だ。スタンディング形式で、中央のテーブルに置かれた二台の七輪を囲み、他のお客さんと一緒に焼肉をするのが特徴だ。
六花界にはいろいろメニューがあるが、初めて訪れる人には1,000円の盛り合わせがオススメ。肉はどれも新鮮でホルモン以外の肉は少々炙る程度で食べられる。また、つけだれは程良い酸味とコクのあるポン酢ダレで、肉が無くなった後も良い酒のアテになるそうだ。飲み物は一律400円、日本酒の種類が豊富で、レアな銘柄に出会えるかもしれない。

rokkakai1.jpg「それでは皆さん、カンパーイ!」という風に、店では全員で乾杯する。新しいお客さんが入るたびに何度も乾杯しているせいだろうか、ひとりで訪れた私だったが、いつの間にか初対面の隣の人や向かい側の人と雑談し、帰る頃には「また今度!」と言って店を出た。

その数日後、私は別の店でひとりで食事をした。読書や考えごとをして充実した時間だったが、この日は少しだけ寂しいと感じた。孤独を認めたトニーが父親の奏でる音楽に今までと違う側面を見いだして違和感を抱いたように、私も六花界で人と食事をする新しい楽しみを知り、それによってひとりの食事に対する思いが変わったのかもしれない。

音楽も食事も、新しい感覚を通すと今までに無い感じ方ができるようになる。ひとりの食事が苦手な人も、私のようにひとりで食べること好きな人も、六花界に行くと、「食」の時間に新たな側面を発見できることだろう。

★お店情報★
店名:六花界
ジャンル:居酒屋
電話番号:03-3252-8644
住所:東京都千代田区鍛冶町2-13-24
交通手段:JR神田駅から徒歩1分
営業時間:17:30~24:00
定休日:日曜、祝日