「ラデュレ・サロン・ド・テ」:
味も雰囲気もオスカー級の「フレンチトースト」
2012年03月23日
【written by 本多綾子(ほんだ・あやこ)】ミーハーのDNAを持ったサッカーファン。2010年には28試合を観戦した。心のチームは鹿島アントラーズ。最近はスタジアム・グルメにもはまっている。-----------------------------------------------------------------------------------------
「名前を呼ばれたとき、『なぜまた彼女なの』と聞こえたような気がした。でも、いいの。そんなことは」とは、第84回アカデミー賞で2度目の主演女優賞を獲得したメリル・ストリープの言葉。誰もが認める大女優になった彼女が最初のアカデミー賞を受賞したのは1979年公開の『クレイマー、クレイマー』だった。ダスティン・ホフマン相手に見事な演技を見せて、助演女優賞を獲得した。
映画の舞台となった1970年代は、1960年代と同様に価値観が劇的に変わった時代だった。映画はメリル・ストリープが演じるジョアンナが、夫テディと5歳の息子ビリーを置いて家を出ていくシーンから始まる。仕事で夜遅く帰ってきたテディにジョアンナは告げる。「私、出ていくわ」と。ジョアンナは「理想の妻であり母親」を演じる自分に不安を感じて死にたいと思うほど追いつめられていたのだ。残されて茫然とするテディだが、子供の面倒を見なければならない。最初に作った食事が「フレンチトースト」。普段、キッチンに立ったことのないテディはパニックだ。牛乳は入れ忘れる。食パンを二つ折りにする。挙句にフライパンをひっくり返して火傷を負う。こうして、テディとビリーのほろ苦い父子生活が始まっていく。
それにしても、食事のシーンが多い映画だ。冒頭のフレンチトーストに始まり、TVディナー、シリアル、グラスに入ったワイン...。しかも、そのどれもが美味しそうには見えない。登場人物の気持ちを代弁するかのように、投げやりで乾ききった感じがする。しかし、テディがビリーと食べる最後の朝食だけは違う。「フレンチトースト」を二人で仲良く作っていく。スクリーンから美味しそうなバターの香りが漂ってくるようだ。この映画を初めて見た1980年、私は、無性にフレンチトーストを食べたくなったことを覚えている。
時は流れて2012年。パリの高級ティーサロン「ラデュレ・サロン・ド・テ」でフレンチトーストが食べられるというので行ってみた。
「ラデュレ」1号店は銀座三越の2階にあるが、私は今回、三越日本橋本店内のカフェを訪れた。内装が凝っていると聞いていたが、確かにデパートの中とは思えない贅沢な雰囲気だ。二つのサロンに分かれており、まず目に飛び込んでくるのが、オールドローズと淡いグリーンのインテリアを使ったルイ・フィリップ様式の「サロン・デ・キャトル・セゾン」。その奥にプロシアブルーのインテリアで統一したナポレオン三世様式の「サロン・ブルー」がある。
夜8時まで営業をしているので、会社帰りに「ラデュレ」に寄ってみるのもいい。フレンチトーストやサンドイッチ、オムレツの後には、もちろん美味しいスイーツが控えている。味も雰囲気も主演女優賞クラスと言えるだろう。
★お店情報★
店名:ラデュレ・サロン・ド・テ
ジャンル:カフェ
電話番号:03-3274-0355
住所:103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店
交通手段:銀座線・半蔵門線「三越前」駅より徒歩1分 JR「新日本橋」駅より徒歩7分
営業時間:10:00-20:00
定休日: 日本橋三越の定休日に準じる