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「ブールミッシュ 日本橋三越店」:シブーストの密かなほろ苦さ
2012年02月17日

【written by 好中由起恵(よしなか・ゆきえ)】スイーツがだいすきで、食後にあま~いものは欠かせない。時間がなくて食べられないときでも、持ち歩けるチョコやグミなどを口にほうり込む。スイーツにあわせてブラックコーヒーを飲むのが至福のとき。
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江國香織の長編小説『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』には9人の女たちが登場する。その9人の女たちは話の中で微妙に相関していくが、「江國マジック」ともいえるたくさんの換喩の効果により、それぞれの個性が垣間見えてくる。たとえば、感傷に浸る女はポール・マッカートニーの楽曲、独身生活を謳歌している現実主義的な女はコンビニのプラスチックに入ったショートケーキ、結婚しているが友人も多く仕事もデキる女はソニアのマニキュア ヴェルニ・ラック55番といったものだ。

主人公は専業主婦の陶子。愛犬と優しい夫が贈る花に囲まれ、何不自由ない結婚生活を送っているように見えるが、実は密かに満たされない孤独感を抱いていた。そんな彼女の好きなものとして「シブースト」が出てくる。

cake1.jpg小説に登場するシブーストは「アンジェリーナ」のものだが、残念ながら、現在は取り扱いがない。しかし、今もこのケーキを看板商品にしている店がある。それが『ブールミッシュ』だ。もともとパリの菓子職人・シブースト氏が考案したもので、「クレーム・シブースト」と呼ばれていたが、当時のレシピを現在の『ブールミッシュ』の店主がパリで修行中に再現。クリームやソテーしたりんご、パイ生地などを層にした「タルト・シブースト」として店に並べることになり、現在もそのときのレシピを生かしながら、おいしさを追求し続けている。

cake2.jpgケーキといえばショートケーキやチョコレートケーキなど甘いだけのものが多いが、『ブールミッシュ』のシブーストは違う。層の一番上を包んでいるのはほろ苦いキャラメリゼ。それが一見完ぺきなしあわせにあふれている陶子に秘められた孤独感に似ている。そして、シブーストのほろ苦さが甘さを引き立てているように、孤独感がしあわせを際立たせているのだ。このシブーストも陶子のイメージにぴったりのケーキだ。

『ブールミッシュ』にはシブースト以外にもたくさんのケーキがショーウインドウに並んでいるが、一度は甘さのなかにほろ苦さの潜むシブーストをぜひ味わってもらいたい。

★お店情報★
店名:ブールミッシュ 日本橋三越店
ジャンル:スイーツ
電話番号:03-3245-1227
住所:〒103-8001東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越B1
交通手段: 地下鉄「三越前駅」から徒歩1分 JR「新日本橋駅」から徒歩7分
営業時間:10:00~20:00
定休日:不定休(日本橋三越に準ずる)