第31回:「バカ言ってる」から始まった壮大なコント
『水谷千重子 演歌ひとすじ40周年記念リサイタルツアー』
2012年06月01日
【written by きただてかずこ】 子供の頃からお笑いが好きで、オトナになった今もバラエティ番組を見なければ夜も日も明けぬ毎日。ライブにもしばしば足を運び、笑える喜びにどっぷり浸りまくっている。【最近の私】 前回、当コラムに書いた『コドモ警察』(TBS)。いよいよデカ長こと鈴木福くんの苦み走り具合がサマになり、吉瀬美智子さんとの屋上でのやり取りに笑いが止まらない感じになってきました(笑)。でも、一番気になるのはナベさん。あの落ち着きっぷりにホレボレするばかりです。
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先日、『友近プレゼンツ 水谷千重子 演歌ひとすじ40周年記念リサイタルツアー』の東京公演に行ってきました。ご存知の方も多いかと思いますが、「水谷千重子」とは芸人の友近さんが演じる大物演歌歌手のこと。つまり、言ってしまえばこのリサイタルは最初から最後まですべてがコントなわけですが、友近さんは最後の最後まで「友近」としての顔を一切見せず、見る側もいるはずのない水谷千重子の存在や、ありもしないリサイタルをすべて受け入れ、このおかしなイベントを大いに楽しんだのでした。
リサイタルは3部構成で、1部は千重子さんの歌とゲストを交えたトーク、2部は千重子さんが主役のお芝居『ゲノゲの女房』、そして3部は1部とは別のゲストを呼んで再び歌とトークという内容。この構成自体、まさに演歌歌手のリサイタル風なのですが、これを単なるコントに見せず、状況をややこしくしているのが、ちょいちょい「本物」が出演していること。お芝居には、主役の友近さんのほか、森三中の大島さん、バッファロー吾郎・Aさん(この日は「千重子さんと同期の演歌歌手・八公太郎」というキャラでしたが)という芸人さんたちに加えて、舞台の経験が豊富な中村繁之さん、山田まりやさんが共演。それらしい雰囲気に仕上げてくれました。
歌のほうでも本当に長く芸能生活を重ねた歌手の方々がバックアップ。私が見に行った東京公演では、ブラザーコーンさんが登場!千重子さんの長きに渡る歌手活動を祝い、架空の思い出話をし、最後はもちろん千重子さんがカバーしている『Won't Be Long』を2人で歌ったのでした。テレビでもたびたび披露していた、演歌風『Won't Be Long』はこのステージでももちろん健在。本家コーンさんの前でも揺らぐことはありませんでした。ほかにも、冠二郎さん、伍代夏子さん、北原ミレイさん、鳥羽一郎さん、ピーターさん、さらには大阪公演にサプライズゲストとして登場した五木ひろしさんなど、全国各地の公演でさまざまなコント...もとい、思い出話やデュエットを繰り広げているようです。
そして、東京公演で本物っぽさに更なるダメ押しとなっていたのが、お祝いに駆けつけたNON STYLE石田さん。もともと坂本冬美さんやジェロさんなど、本当の演歌歌手の方々とプライベートで交流のある石田さんなので、架空のエピソードトークも自然な流れ。そんなバックグラウンドがある人をわざわざ呼ぶあたり、友近さんの微に入り、細に入りのこだわりが見えるゲストでした。
友近さんは、大阪で『THAT'S ENKA TAINMENT〜ちょっと唄っていいかしら?〜』(朝日放送)という演歌バラエティ番組の司会をしていますが、今回のリサイタルで演歌界のバックアップを受けることができたのも、番組内でのつながりがあったからなのでしょう。このリサイタルでは、歌のゲスト以外にもさまざまな歌手や芸能人の方々が千重子さんとしての友近さんに協力しています。まだツアーが続くので詳細は控えますが、T.M.Revolutionこと西川貴教さんがPVで風にあおられるようになったことには千重子さんの影響があった、といったエピソードも明かされるようです。
最後は手のひらに焼き豆腐をのせることや、リマールではなく羽賀研二さんの『ネバーエンディングストーリー』をBGMに使うことでもお馴染みの越後前舞踊を披露し、さらにアンコールにもこたえてお開きとなった『水谷千重子 演歌ひとすじ40周年記念リサイタルツアー』。これほどいろんな人を巻き込んでの大掛かりなコントは、この先、なかなかお目にかかれないでしょう。バカ言ってる千重子さんと、これを実現した友近さんに「ありがとうって伝えたくて」という気分です!(笑)