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「本石亭」:こだわりの本格派カレーが食べられる、
                      「お酒が飲めるカレー専門店」

2012年06月28日

【written by 山崎恵(やまざき・めぐみ)】クラシックバレエ、絵画鑑賞が昔から大好き。自らも少々たしなむ。午前にバレエのレッスンを受け、午後に絵を描くという、理想的な日を1年のうちに何日間は作りたいと思っている。
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2008年に出版された江國香織と辻仁成の第2弾コラボ小説『右岸』と『左岸』。この2つの小説の主人公は茉莉と九。茉莉から見た人生を描いたのが江國香織の『右岸』で、九から見た人生を描いたのが辻仁成の『左岸』である。

『左岸』では、九が遭遇するさまざまな経験が書かれているが、その人生を「波瀾万丈」の一言で片付けることはできない。なぜなら、彼には「特別な能力」が備わっていたからだ。この「特別な能力」により、九の人生は自身の意思とは関係なく、どんどん不思議な方向へと進んでしまう。彼が最初にその能力に気付いたのは、カレーライスを食べているときだった。テレビではちょうど超能力者がスプーン曲げに挑戦するという番組をやっていた。結局、超能力者はスプーンを曲げることができなかったが、気が付くとテレビのこちら側にいた九のスプーンが曲がっていたのだ。成長するにつれてどんどん強くなるその能力は、彼の人生に大きな影響を与えることになる。

DSCF3082.JPG神田駅に近い「本石亭」は、「本格派カレー」を食べたい人にはうってつけのカレー専門店だ。欧風カレー、インド風カレー、キーマカレーとドライカレーの4種類のカレーがあり、値段はすべて800円。お店の人に聞いてみると、「4種類すべてスパイスなどが違い、作り方が始めからまったく違うので、お客さんの好みはハッキリわかれています」とのこと。欧風カレーは「おふくろの味」、インド風カレーはさらさらでスパイシー、キーマカレーは4種類の中では辛めだが、南インド風でとろみがある。そして、ドライカレーはいわゆるチャーハンのようなものだそうだ。私が注文したのはキーマカレー。なるほど辛いけれど、1口食べると口の中にスパイスの香りが広がり、クセになりそうな一品だ。一見、量が多そうにも見えたが、香りとなんとも言えない辛さに食欲をそそられ、かるく完食してしまった。カレーにはトッピングをつけることもでき、チーズ、ほうれん草、半熟卵などが100円、ハンバーグや白身のフリッタなどが200円、ヒレカツ250円と種類が豊富で楽しめそうだ。ほかにはコールスロー、マカロニサラダ、ポテトサラダの3種類のサラダがあり、いずれも150円。ポテトサラダはやさしい味で、カレーとの相性は抜群だ。

DSCF3089.JPGこの店はバーテンダーの経験が長いマスターが、お酒だけでなく、ほかにプラスアルファーがあるお店を開きたいと思い、「お酒が飲めるカレー専門店」として始めた。オープンから7年を迎える今でも、1年に300食はカレーを食べているそうで、カレー道を探求する熱意は冷めることがない。また、「本石亭」では、夜に宴会を開くこともできる。宴会用の部屋は和室なので、自宅にいるような感覚で仲間とのひとときを楽しく過ごせるはず。ただし、事前の予約が必要なので、電話で確認するといいだろう。

★お店情報★
店名:カレーライス 本石亭
ジャンル:カレーライス
電話番号:03-3272-2909
住所:東京都中央区日本橋本石町4-4-16
交通手段:JR神田駅南口より徒歩5分
営業時間:11:30~15:00 18:00~22:00
定休日:土日祝日

「ミカドコーヒー 日本橋店」:"カフェ"という日常に見る国民性
2012年06月22日

【written by 梶尾佳子】好きなものは映画とお酒と睡眠。ワインは1~2杯で眠くなるのに、なぜかウイスキーはストレートでもいける体質の持ち主。
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2年ほど前に亡くなったヌーベルヴァーグを代表するフランス人映画監督、エリック・ロメール。彼は89歳でこの世を去るまで、他愛もない日常の風景を切り取った作品を撮り続けた。この監督の作品を観るといつも「日常の中にこそドラマがある」ということを思い出させられる。

そんな彼の作品の1つに、パリのカフェを扱った話がある。「レネットとミラベル または4つの冒険」というオムニバス作品の中の「カフェのボーイ」だ。

DSC_0301.JPGレネットとミラベルという2人の少女が、パリのとあるカフェで待ち合わせをする。先についたレネットがコーヒーを注文し、小銭がなかったため200フラン札を出すと、カフェのギャルソンがいきなり怒り出す。「4フラン30のコーヒーに200ドル札だなんてふざけるな!釣りはないから小銭で払え!」さらに「コーヒー1杯で何時間も粘る気だろう、そんな奴は客じゃない!イスは使うな!」と、言いがかりとしか思えないギャルソンの態度に驚くレネット。後から来たミラベルも小銭を持っておらず、さらに激昂するギャルソンに、らちがあかないと思った2人は隙を見てカフェから逃げ出す。

日本の感覚でいえばまるでコントのようなワンシーンだが、舞台はパリだ。パリのカフェのギャルソンはプロ意識がとても高い。その場を仕切っているのは自分だというプライドを持っているからこそ、客との間のこんなトラブルもまったくありえない話じゃないだろうな、と思ってしまう。このように、フィクションの中にほんの少しの現実感が上手く溶け込んでいるからこそ、「日常の中のドラマ」として面白く成り立つのだろう。この作品を見ていると、ちょっと変わった人や偏屈な人もすべてひっくるめてパリという街が作られているんだな、と愛おしく感じられる。

DSC_0302.JPGでは日本の場合はどうだろう。三越前の駅近くの「ミカド珈琲」は創業60年以上のコーヒー専門店。軽井沢にも展開していて、ミカドの「モカソフト」は軽井沢名物とされている。しかし実は、創業の地はこの日本橋店。「ミカドコーヒー」と書かれたオレンジの看板も、文字がレトロでなんとも可愛らしい。




店は3階建てで、1階はスタンディング席のみ、2階と3階はコーヒーと軽食がとれるテーブル席になっている。1階のメニューの値段は2階より少し安いので、時間がない時は1階、ゆっくりコーヒーが飲みたければ2階、とその時々の気分や都合によって選ぶことができる。さらにコーヒーやソフトクリームはテイクアウトも可能で、地下には食事のできるダイニングもあるらしい。「専門店」と言うからには、コーヒーの味だけに特化した昔ながらの喫茶店を想像していたが、意外と柔軟に対応してくれる店だな、という印象を受けた。

DSC_0298.JPG肝心の味のほうも、もちろん確かだ。私はゆっくり過ごしたかったので2階の席でブレンドを注文した。適度な酸味と飲みやすい味わいのコーヒーに食欲も刺激され、チーズトーストと名物のモカソフトも追加した。レモンの載った香り豊かなチーズトーストを私が食べ終えるタイミングを見計らって、ウェイターさんがモカソフトを運んでくれた。どちらも、このコーヒーがなくても食べに来たいと思うほど美味しく、大満足のティータイムとなった。

DSC_0296.JPG"コーヒーを飲む"という日常的なことが行われるカフェには、国ごとの考え方が表れる。ミカド珈琲は「柔軟なサービス」と「クオリティの高さ」という、日本の良さがバランスよく表れたカフェだ。2階の落ち着く空間でゆっくりとコーヒーを飲んでいたら、パリもいいけど東京のカフェにもこの国ならではの良さがあるな、としみじみ感じた。

★お店情報★
店名:ミカド珈琲 日本橋店
ジャンル:カフェ
電話番号:03-3241-0530
住所:東京都中央区日本橋室町1-6-7
交通手段:三越前駅より徒歩1分
営業時間:月~金7:15~19:30
土8:00~18:00
日10:00~18:00
定休日:無休

「DevilCraft(デビルクラフト)」:神田で味わうシカゴの味
2012年06月14日

【written by 塩田明日香(しおた・あすか)】大の白米好き。子供の頃、「お母さんが作る料理で何が一番好き?」と聞かれ、「白いご飯!」と元気良く答えた親不孝者。でもそれくらい白米が大好き。白米さえあれば、どこでも生きていけます。
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1987年公開の映画【アンタッチャブル】は、1930年代初期のシカゴが舞台。マフィアのボス、アル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)と、財務省から派遣されたエリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)率いる「アンタッチャブル(買収されない連中)」の戦いを描く。
主演のケヴィン・コスナーの熱演もさることながら、印象深いのはアル・カポネ役のロバート・デ・ニーロだ。晩餐会で参加者に演説をする場面。野球におけるチームワークの大切さを話しながら、参加者を後ろからバットでめった打ちにする姿は、本当に恐ろしくて背筋がゾワゾワした。この時代のシカゴに生まれなくて良かったと、思わず映画と現実が混在してしまったほどだ。

しかしカポネのいないシカゴには、ぜひ行ってみたい!というわけで、今回は日本にいながらシカゴの味を楽しめるお店を紹介しよう。「DevilCraft(デビルクラフト)」は、3人のアメリカ出身のオーナーが経営している、シカゴ風ピザが楽しめるお店だ。シカゴ風ピザは別名「スタッフド・ピザ(詰め込まれたピザ)」呼ばれ、普段私たちが食べるピザよりずっと分厚いもの。そんな分厚い生地の間に、具とチーズがたっぷり入っているので、非常にボリュームがあるピザだ。お店ではピザだけでなく、様々な地域のビールを取り揃えており、店内はいつも大勢の外国人と日本人で賑わっている。

シカゴピザ.JPGまず注文したのは「ビッグ・チーズ」。エキストラチーズにモッツァレラ、パルメサン、プロボローネに、特製トマトソースを合わせたピザで、サクサクとした食感だ。生地が分厚いので、一切れだけでもかなり食べ応えがあるが、重たさはまったく感じられない。チーズとトマトソースだけのシンプルな味付けも食べやすく、1人で1枚全部平らげてしまった。

ビール.JPGこのピザと一緒に頼んだハワイのクラフトビール「マナウィート」は、パイナップルを使用しているため、飲むと口の中にフルーティーな甘さが広がる。非常に爽やかで飲みやすく、ビール独特の苦味が得意でない人にもおすすめだ。次に注文した「ヒューガルデンホワイト」は、ベルギー産の乳白色がかった淡い黄色が美しい。オレンジの皮とコリアンダーを使用したスパイシーな小麦のビールで、苦みやスパイシーさの中に、ほんのりとした甘みが加わっている、喉越しのすっきりした爽快感のあるビールなので、まさにこれからの暑い夏にピッタリのビールだ。

神田界隈では珍しく、外国人のお客さんが多いため、ピザやビールだけでなく、雰囲気でも外国を味わうことができるはず。土日や祝日もやっているが、人気店なので、来店前に予約を入れることをお勧めする。

★お店情報★
店名:DevilCraft(デビルクラフト)
ジャンル:居酒屋・バー
電話番号:03-6265-1779
住所:東京都中央区日本橋室町4-2-3 石川ビル1-5階
交通手段:JR神田駅南口から徒歩2分
営業時間:月~金(平日)17:00~23:30
土15:00~23:30 日・祝日 15:00~22:00

「室町東洋」: 人種のるつぼの国から来た「フライドチキン」
2012年06月08日

【written by 本多綾子(ほんだ・あやこ)】ミーハーのDNAを持ったサッカーファン。2010年には28試合を観戦した。心のチームは鹿島アントラーズ。最近はスタジアム・グルメにもはまっている。
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『ヘルプ~心をつなぐストーリー~』は、メジャー映画の大作が多いハリウッドでは珍しく、口コミで人気が広がった映画である。舞台は1960年代のアメリカ。"ヘルプ"と呼ばれる黒人メイドを軸に、彼女たちの人生を本に書く若い白人女性、黒人に対する扱いを差別とすら感じていない雇い主の女主人、結婚こそが女性の幸せだと考えている母と反発する娘、さまざまな立場の女性が織りなすドラマだ。大ヒットの一番大きな理由は、今年のアカデミー賞助演女優賞を獲得したオクタヴィア・スペンサーやヴィオラ・デイヴィスといった個性的な女優の演技力や脚本の素晴らしさにあったのだろうが、1963年当時のアメリカ南部の人々を生き生きと蘇らせた衣装や料理の存在も忘れてはならない。

女性たちの服装はニューヨークのような大都会で流行っていたものではなく、保守的な南部の町らしく、あえて"流行遅れ"のデザインを採用したという。また、黒人メイドが腕をふるって作る南部料理は豪華で、「アメリカの料理=美味しくない」という先入観が崩されていく。そして、作品の中で大切な役割を果たしているのが、黒人メイドのミニーが料理下手のシーリアに教える"フライドチキン"。2人の友情の証として登場するのだが、映画を見ていると、なんとしても見事に揚がった骨付きのチキンを食べてみたいという欲望に駆られた。というわけで、友達3人を誘い、日本橋三越前の洋食レストラン「室町東洋」へと行ってみた。

muromachitoyo_3.jpg昭和初期の米店が前身という「室町東洋」はプロ野球選手のユニフォームがあちらこちらに飾ってあり、店の雰囲気はいたってカジュアル。店内にあるテレビでは野球中継が流れていて、昭和の匂いがするスポーツバーといった感じだ。メニューを見て驚いたのは、日本橋のど真ん中にある店なのに、ほとんどの料理の値段が3ケタに収まること。調子に乗ってフライドチキンを始め、あれもこれもと頼んでみた。

お通しに出た「筍の土佐煮」や前菜の「5種類のソーセージ」は、さすがレストランといった味。安い居酒屋と違い、味をスパイスや調味料で誤魔化していない。筍は新鮮で歯ごたえがよく、ソーセージは肉のうま味が十分に出ている。私は味に満足しながら、なぜフライドチキンが食べたかったのかと友達に熱弁を奮っていた。

muromachitoyo_1.jpgそして、ついに待ちわびていた、フライドチキンがやってきた!ところが、お皿を見てびっくり。それは私が思い描いていた骨付きのチキンではなく、見事に"鶏の唐揚げ"だったのだ。見かけは"鶏の唐揚げ"でも、味付けは違うのではないかという望みは友人の一言、「唐揚げですね」で泡と消えた。かなり残念だったけれど、"唐揚げ"のようなフライドチキンは、醤油、ニンニク、しょうがの味が肉に染み込んでいて、とても美味しかった。

しかし、フライドチキンが生まれた背景を考えると、この店のフライドチキンが実は鶏の唐揚げだったというのも不思議はないのかもしれない。スコットランド移民の鶏料理だったものに、アメリカ南部の奴隷がスパイスを加えて作ったのが現在のフライドチキンだ。「人種のるつぼ」と言われるアメリカらしい料理である。そのフライドチキンが「各国料理のるつぼ」とも言える日本にやってきて、この店では洋風の名前だけを残し、姿も味も日本独特の "鶏の唐揚げ"に変化した。西洋料理を日本人好みにして「洋食」という食文化を築いた国ならではのことである。

muromachitoyo_2.jpg気がつけば、オムレツや手羽餃子など、4人で20品近くを平らげていた。オムレツは柔らかめの卵にデミグラスソースがたっぷりとかかっており、4人でも十分な量。また、手羽餃子は手羽先とひき肉の量のバランスもよく、皮もパリっと揚がっていて香ばしい。お酒の種類も多い店なので、ちょっとした集まりに最適の場所だ。「室町東洋」には、ほかにも鉄板焼き専門のフロアがある。次回はそちらで、徳島から直送の黒毛和牛を使った「和牛ステーキ」も味わってみたい。

★お店情報★
店名:室町東洋
ジャンル:レストラン
電話番号:03-3241-0003
住所:〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1丁目5−2
交通手段:銀座線・半蔵門線「三越前」駅より徒歩1分 JR「新日本橋」駅より徒歩7分
営業時間:平日/11:00-16:00(昼)16:00-23:00(夜)
土曜・日曜/11:00-16:00(昼)
祝日/11:00-16:00(昼)16:00-21:30(夜)
定休日: なし