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「ミカドコーヒー 日本橋店」:"カフェ"という日常に見る国民性
2012年06月22日

【written by 梶尾佳子】好きなものは映画とお酒と睡眠。ワインは1~2杯で眠くなるのに、なぜかウイスキーはストレートでもいける体質の持ち主。
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2年ほど前に亡くなったヌーベルヴァーグを代表するフランス人映画監督、エリック・ロメール。彼は89歳でこの世を去るまで、他愛もない日常の風景を切り取った作品を撮り続けた。この監督の作品を観るといつも「日常の中にこそドラマがある」ということを思い出させられる。

そんな彼の作品の1つに、パリのカフェを扱った話がある。「レネットとミラベル または4つの冒険」というオムニバス作品の中の「カフェのボーイ」だ。

DSC_0301.JPGレネットとミラベルという2人の少女が、パリのとあるカフェで待ち合わせをする。先についたレネットがコーヒーを注文し、小銭がなかったため200フラン札を出すと、カフェのギャルソンがいきなり怒り出す。「4フラン30のコーヒーに200ドル札だなんてふざけるな!釣りはないから小銭で払え!」さらに「コーヒー1杯で何時間も粘る気だろう、そんな奴は客じゃない!イスは使うな!」と、言いがかりとしか思えないギャルソンの態度に驚くレネット。後から来たミラベルも小銭を持っておらず、さらに激昂するギャルソンに、らちがあかないと思った2人は隙を見てカフェから逃げ出す。

日本の感覚でいえばまるでコントのようなワンシーンだが、舞台はパリだ。パリのカフェのギャルソンはプロ意識がとても高い。その場を仕切っているのは自分だというプライドを持っているからこそ、客との間のこんなトラブルもまったくありえない話じゃないだろうな、と思ってしまう。このように、フィクションの中にほんの少しの現実感が上手く溶け込んでいるからこそ、「日常の中のドラマ」として面白く成り立つのだろう。この作品を見ていると、ちょっと変わった人や偏屈な人もすべてひっくるめてパリという街が作られているんだな、と愛おしく感じられる。

DSC_0302.JPGでは日本の場合はどうだろう。三越前の駅近くの「ミカド珈琲」は創業60年以上のコーヒー専門店。軽井沢にも展開していて、ミカドの「モカソフト」は軽井沢名物とされている。しかし実は、創業の地はこの日本橋店。「ミカドコーヒー」と書かれたオレンジの看板も、文字がレトロでなんとも可愛らしい。




店は3階建てで、1階はスタンディング席のみ、2階と3階はコーヒーと軽食がとれるテーブル席になっている。1階のメニューの値段は2階より少し安いので、時間がない時は1階、ゆっくりコーヒーが飲みたければ2階、とその時々の気分や都合によって選ぶことができる。さらにコーヒーやソフトクリームはテイクアウトも可能で、地下には食事のできるダイニングもあるらしい。「専門店」と言うからには、コーヒーの味だけに特化した昔ながらの喫茶店を想像していたが、意外と柔軟に対応してくれる店だな、という印象を受けた。

DSC_0298.JPG肝心の味のほうも、もちろん確かだ。私はゆっくり過ごしたかったので2階の席でブレンドを注文した。適度な酸味と飲みやすい味わいのコーヒーに食欲も刺激され、チーズトーストと名物のモカソフトも追加した。レモンの載った香り豊かなチーズトーストを私が食べ終えるタイミングを見計らって、ウェイターさんがモカソフトを運んでくれた。どちらも、このコーヒーがなくても食べに来たいと思うほど美味しく、大満足のティータイムとなった。

DSC_0296.JPG"コーヒーを飲む"という日常的なことが行われるカフェには、国ごとの考え方が表れる。ミカド珈琲は「柔軟なサービス」と「クオリティの高さ」という、日本の良さがバランスよく表れたカフェだ。2階の落ち着く空間でゆっくりとコーヒーを飲んでいたら、パリもいいけど東京のカフェにもこの国ならではの良さがあるな、としみじみ感じた。

★お店情報★
店名:ミカド珈琲 日本橋店
ジャンル:カフェ
電話番号:03-3241-0530
住所:東京都中央区日本橋室町1-6-7
交通手段:三越前駅より徒歩1分
営業時間:月~金7:15~19:30
土8:00~18:00
日10:00~18:00
定休日:無休