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第38回:80年代の小ネタに「じぇじぇ!」 ~見逃せない『あまちゃん』の魅力
2013年05月10日

【written by きただてかずこ】 子供の頃からお笑いが好きで、オトナになった今もバラエティ番組を見なければ夜も日も明けぬ毎日。ライブにもしばしば足を運び、笑える喜びにどっぷり浸りまくっている。
【最近の私】先日、『ゴッドタン』(テレビ東京)の「マジ歌選手権」のライブに行ってきました。フットボールアワー・後藤さんの生「ジェッタシー」は最高でした!てか、ただのブランキージェットシティでした(苦笑)。
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amachan.JPGこの春話題のドラマのひとつ『あまちゃん』(NHK)。登場人物たちの驚いた時の感嘆詞として使われる言葉「じぇ!」は今年の流行語大賞も狙えるのではないかと言う人もいるほどです。私も毎朝『あまちゃん』を楽しみにしている視聴者の1人。最近では録画して繰り返し見たり、時には再放送までチェックしたりしています。

そんな『あまちゃん』の魅力のひとつは、画面や登場人物のセリフのあちこちに散りばめられた小ネタの数々。中でも、主人公・アキ(能年玲奈)の母親の春子(小泉今日子)や彼女と同年代の登場人物たちが青春時代を過ごした80年代の話題には、懐かしさを感じる人も多いでしょう。私もこの会話に無理なく入れる世代。今は「ヤンキー」と呼ばれる不良ですが、当時の言い方は「ツッパリ」。聖子ちゃんカットに風邪でもないのに口元にはマスク、引きずるかと思うぐらいの長いスカートをはき、上履きのかかとをつぶして校内を闊歩する春子の姿は、まさに正統派のツッパリです(笑)。

そして、以前登場した、春子がテレビの音楽番組をラジカセで録音するシーンも、涙なしには見られないシーン。まだ一般家庭にビデオデッキがなかった当時、日本各地のティーンエイジャーたちは家族が大声を出さないことを祈りながら、テレビ番組をラジカセで録音するという、今では笑い話でしかない不毛な努力をしていました。iTunesで曲をダウンロードできるような手軽さはおろか、TSUTAYAのようなレンタルショップもないその頃は(特に地方では)、『ザ・ベストテン』を静かに録音し、文字通りテープが擦り切れ、時にはのびてしまうほど聞きまくっていたのでした。

そんな春子の青春時代を彩った歌謡曲に、最近やたら反応しているのがアキの友達・ユイ(橋本愛)。アイドルを目指し、高校卒業後は東京でデビューをもくろむ彼女ですが、春子が高校時代に使っていた部屋に通された瞬間、壁に貼ってあったチェッカーズや吉川晃司のシングルレコードに狂喜乱舞。一目でトリコになり、その夜は半ば無理矢理、春子の部屋に泊まります。そして昨日の『あまちゃん』では、斉藤由貴の『卒業』の出だしの歌詞「制服の胸のボタンを下級生たちに...」の後が思い出せない春子たちに、「『ねだられ』、じゃないですか?」とさりげなく教えたユイ。彼女のアイドルへの想いは、憧れというよりリスペクトの想いのほうが近いのかもしれません。

ちなみに、物語の舞台・北三陸市の元となった久慈市は、岩手県の海沿いの町。私は東北育ちで、今は実家が岩手県内にあるので余計『あまちゃん』に入れ込んでしまいます。ゴールデンウィークに帰省したところ、駅にはドラマのロケ地をアピールするのぼりが置かれ、おみやげ品にはどれも『あまちゃん』のシールが。連休中は毎日天気も悪く、寒かったのですが、遠方から久慈にたくさんの人が集まったそうです。そんな地元が盛り上がっている小ネタは、エキストラとして登場する人々。ロケ地周辺に住む人たちが協力しているため、誰が映った、どこが映ったと話題になっているんだそうです。また、天野家で使われている瀬戸物は小久慈焼という、久慈の焼き物。細かいところまで地元のことが盛り込まれ、抜かりがありません。

なお、「じぇ!」については、すでにあちこちで語られている通り、今は久慈でもあまり使われていないようです。岩手県民が驚いたときの感嘆詞は「じゃ!」。これも驚きの度合いによって、「じゃじゃじゃ」と数が増えます。これも若い世代はあまり使わないようですが、地元には『じゃじゃじゃTV』(IBC)というローカル情報番組があります。東京なら『王様のブランチ』(TBS)を放送している時間にやっていて、メインキャスターも地元で大人気のアナウンサー!見る人が「じゃじゃじゃ!」と驚く情報を届けているようです。

今後の『あまちゃん』の展開について、このドラマの訓覇圭チーフ・プロデューサーは、「物
語の4年後に起こった東日本大震災について触れるかどうかは未定」とコメント。脚本を担当する宮藤官九郎さんは、著書『え、なんでまた?』(文藝春秋)の中で「見方によって喜劇にも悲劇にも受け取れる。そういうのが好きで自作にも盛り込みます」と書いています。どんなにつらく苦しい中にも必ず笑いはあるはず。更なる小ネタとともに注目していきたいと思います。